文春オンライン

2023/01/04

日本の製造現場の1割を高齢社員が支える

 ただし、新規学卒者に不人気になったのかといえば、そうでもない。「2022年版ものづくり白書」によれば、製造業における新規学卒者は2013年の13万人から増加傾向にあり2020年は16万5600人となっている。全新規学卒者における製造業への入職割合もこの数年は12%前後を維持している。

 新規学卒者の就業が増えているにもかかわらず、34歳以下の就業者の割合が減っているのはこの年代で退職する人が多く、新規学卒者の就業が多少増えたぐらいでは穴埋めできていないということだ。増えているといっても底を打っただけで、多くの若者が製造業に押しかけていた時代のような勢いに戻ったわけではない。

 34歳以下の離職者が多いことを窺(うかが)わせるデータもある。独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ものづくり産業におけるDXに対応した人材の確保・育成や働き方に関する調査結果」(調査時期は2020年12月)によれば、中途採用がメインとなっている。2017~2019年度に中途採用を「募集しなかった」企業は13.4%にとどまっているのだ。「中途採用が中心」という方針の企業は52.6%と半数を超えており、「新卒採用が中心」(21.4%)を大きく上回っている。

 これは同時に、新規学卒者の採用が若干増えようが、中途採用を積極的に展開しようが、定年退職や離職者の穴を埋めるだけの人数を確保し切れていない実態を示すものである。米国と中国の対立激化などによって海外に製造拠点を移転させた企業が国内回帰を求められているが、もしそうした動きが大きくなれば人材確保はさらに厳しさを増すことになるだろう。

 若い就業者が計画通り採用できず、定着もしないとなると、必然的にベテラン勢に頼ることとなる。老後の生活費不足を働くことで補いたいと考える人が増えていることも手伝って、製造業の65歳以上の就業は2012年頃から2017年まで上昇カーブを描いた。「2022年版ものづくり白書」によれば、2002年は58万人だったが2021年は91万人にまで増えた。これは製造業全体の就業者の8.7%にあたる。

 日本の製造現場の1割近くは高齢社員によって支えられているのである。高齢者の就業が進んだことで、34歳以下の割合がより下がって見えている面もある。

 とはいえ、高齢者の場合、健康面での個人差が大きくなり誰でも良いわけではない。加齢に伴う体調面での不調も増える。若い頃のように働けるわけではない。