これから日本が必ず直面する「人口減少」は、各業界にどんな影響を招くのか。ここでは「住宅業界」に絞って解説。マンションや一戸建てなど新築物件の需要減少は“ほぼ確実”とされる理由とは?

 累計100万部を突破したジャーナリストの河合雅司氏の『未来年表』シリーズ最新刊『未来の年表 業界大変化』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

新築物件の需要減少は、ほぼ約束された未来だ。写真はイメージです ©getty

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なぜ住宅需要は目減りしないのか

 空き家問題が深刻化しているというのに、新築のマンションや一戸建て住宅の建設が続いている。

 何とも不経済に思われるが、住宅メーカーや不動産会社にしてみれば「顧客の需要があるのだから、物件を提供するのが住宅企業としての社会的責任だ」ということだろう。人口減少という長期スパンの課題と、足元で起きている課題とを1度に解決することの難しさがある。

「住宅市場に関しては、人口減少と歩調を合わせて需要が減っていくわけではない」との見方がある。人口が減少しても世帯数は増えていることが根拠だ。だが、世帯数を押し上げている要因を分析するとかならずしもそうとは言い切れない。

 世帯数を押し上げているのは一人暮らしだが、その多くは住宅を新規に取得するとは言い難い高齢者だからである。2020年の国勢調査を見てみると、一人暮らし世帯の総数は2115万1042世帯(一般世帯の38.0%)で、このうち65歳以上が671万6806世帯と約3割を占めている。

 むしろ、30代~40代といった住宅購買年齢層の減少ほど住宅需要が目減りしない理由は、相続税対策需要の高まりだ。

 不動産を取引する際の時価(実勢価格)より相続税がかかる基準となる価格(相続税評価額)が低いことから、相続税の負担を減らす節税方法として不動産の購入は広く知られている。地方に住む富裕な高齢者が東京や大阪の中心地にあるタワーマンションを購入するといった例は珍しくない。

 相続税対策を考える客層の取り込みを競う不動産会社は営業を強化しており、こうした富裕層の動きは、投機家による買い占めと並んで都心マンション価格の異常なまでの高騰を招く一因ともなっている。