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150万戸の空き家再生

 今後、新築物件を減らす要因は、既存の中古住宅市場における取引の活性化だけではない。新たな要因となりそうなのが空き家の再生である。

 政府は活用を進めていく方針だ。国交省の資料によれば、簡易な手入れによって活用可能で、しかも最寄り駅から1キロメートル以内という空き家は全国に約50万戸(一戸建て約18万戸、共同住宅等が約32万戸)ある。

 最寄り駅から1キロメートル以内の好立地だが腐朽破損しているものが約46万戸、耐震性不足の物件が約56万戸ある。これら約102万戸を合わせた約152万戸について、政府は改修や建て替えなどを施して「住宅」として蘇らせることを想定している。ますます新築物件の建築数を押し下げることになろう。新築需要が少なくなれば不動産の資産価値そのものが下落する可能性も出てくる。

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 住宅取得年齢層の縮小に加えて、「空き家」の再生が本格化してくると、新築物件を主力としてきた住宅メーカーや不動産会社は収益モデルの見直しを迫られる。中古販売をこれまで以上に強化しなくてはならなくなるだろう。他方、中古住宅市場の活性化は、リフォームの市場規模の拡大につながる。野村総研はエアコンや家具、インテリア商品の購入費などを含めたリフォーム市場は年間7兆~8兆円台で推移すると見積もっている。

 人口減少は、住宅メーカーや家具メーカー、不動産会社など「住まい」に関係する各産業の役割を大きく変えていく。

住宅選びはどう変わるか

 空き家は地域全体の景観を損ない、地価の下落を引き起こす。犯罪者が隠れ家のように利用したり、火事や老朽化した壁などが落下して思わぬ事故を引き起こしたりする恐れもある。老朽化したマンションの空き部屋の増加は、建物のメンテナンスを困難にさせ、住み続けている人々の生活を脅かしている。いずれも放置できない社会課題だ。住宅産業に影響を及ぼすからといって、空き家の再生は止めるわけにはいかないのである。

 そうでなくとも地方では人口密度の低いエリアが広がり、行政サービスや公的サービスをどう届けるかが課題となり始めている。日本人は“新築信仰”が強いとされるが、人口減少社会において宅地を開発して都市を膨張させ続けることはできない。

 それは「住まい」としてだけでなく、「街づくり」の視点ももって住宅選びをしなければならない時代に変わってきているということでもある。今後は築年数だけでなく、立地や建物の性能、地域コミュニティーの有無といった要素も含めた総合的な視点をもって住宅の価値を評価することが求められる。

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