今後30年で30代前半が3割減
だが、住宅を購入する若い世代が減る以上、いつまでも新規の住宅数を増やし続けることはできない。
国交省の資料によれば、持ち家の保有率は29歳までの9%に対して、30代が24%、40代が49%だ。結婚などを契機として30代で住宅取得を考え始める人が多いということである。
だが、先述した通り、30代前半は今後30年で約3割少なくなる。これは、ほぼ「確定した未来」だ。
そうでなくとも、これから住宅を取得する年齢となる若者の間ではシェアリングエコノミーが定着してきている。少子化で相続人が少なくなり、一人で何軒もの住宅を相続する見通しとなっている若者も少なくない。需要はどんどん減っていくのである。
晩婚化で新築より中古に目が向く人が増える
しかも、新築住宅に関しては晩婚化が押し下げ要因になりそうである。住宅はローンを組んで購入する人が大半だ。月々の返済額を考慮すれば若いほうがローンを組みやすい。ところが、住宅取得年齢が晩婚化で40代半ば以降となれば、月々の返済額が大きくなるので取得する物件の価格の方を抑え込みたいという人の割合が相対的に増える。新設住宅よりもリーズナブルな中古住宅へと目が向く人が増えることとなるだろう。
実は、これまでも新築住宅の着工戸数は多少の変遷を重ねながら減少カーブを描いてきていた。30代前半の減少に晩婚化の影響が加わって、今後は新築住宅の取得者はさらに下落の道をたどることになるだろう。
野村総合研究所の推計(2022年)は、新設住宅の着工戸数は2021年度の87万戸から、2030年度は70万戸、2040年度には49万戸へと減少していくと見込んでいる。
2030年度の利用関係別の推計は、持ち家(自分が居住する目的で建築する物件)25万戸、分譲住宅(建て売りまたは分譲目的で建築する物件)17万戸、給与住宅を含む貸家(賃貸する目的で建築する物件)28万戸だ。新築といっても、自宅として建てる人は案外少ない印象である。
一方、野村総研は、中古住宅の流通量も予測しているが、2018年の16万戸から、2030年に19万戸、2040年には20万戸へとゆるやかだが増加するとの予測だ。
ただし、晩婚化で増加すると言っても「横ばい」と言っていいほどの増加率である。新築住宅の着工戸数の目減り分を補うほどの規模とはならないのは、住宅を購入し始める30代~40代の減り方が大きいためである。新築か中古かの区別とは関係なく、住宅取得の総数が全体的に減っていく。