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「この作品に本気だった」東出昌大(34)“主演復帰映画”で脚本をめぐる泥沼訴訟トラブル《知らぬ間にシーンの追加と脚本改変、脚本料は10万円…》

「この作品に本気だった」東出昌大(34)“主演復帰映画”で脚本をめぐる泥沼訴訟トラブル《知らぬ間にシーンの追加と脚本改変、脚本料は10万円…》

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「何の相談もなく、脚本が書き換えられた」

「ARTS for the future!(AFF)」という、コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業の助成金を受けて製作されることが決まり、片嶋監督の事務所で五藤氏、荒井氏、寺脇氏を交えた打ち合わせが行われた。

「この時、寺脇氏から『五藤さんの名前だけでは資金集めが難しい。荒井氏と共同脚本にしてくれ』と提案があったそうです。五藤氏は脚本の完成までに荒井氏の力を借りていたこともあり、快く同意したと聞いています。その後、2人が協力して調整を行った脚本を五藤氏が片嶋監督に送付。片嶋監督からはこれを準備稿として印刷すると連絡を受けた。

 しかし、クランクインの2カ月ほど前になって突然、荒井氏は五藤氏に脚本の大幅な変更を提案。この改変内容を巡って、荒井氏と五藤氏の間で意見の相違があったようなのです」(同前)

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『天上の花』(映画公式Twitterより)

 荒井氏が求めてきたのは、それまでの脚本にはなかったあるシーンの追加だった。

「荒井氏は萩原朔太郎と三好達治が戦争詩について論じるシーンなどを追加することを主張したそうです。五藤氏はこれを受け入れられず、同意できない旨を伝えたそうです。片嶋監督にも相談したところ、『荒井さんが納得できないなら降りてもらうしかない』と言っていたそうなのですが……。完成稿の締め切り直前に荒井氏から送られてきた脚本は、提案されたシーンはもちろん、他にも大幅なシーンの追加と改変がされていた。

 それまでは脚本の細かな点に関しても議論しながら修正を進めていたのに、突然、何の相談もなく脚本が書き換えられたことに驚いた五藤氏は、慌てて監督に電話をしたそうです。片嶋監督も脚本の変更には戸惑いを隠せない様子だったといいます。その電話で五藤氏は初めて、翌日に荒井氏、片嶋監督、寺脇プロデューサーによる打ち合わせがあることを知らされた。

 五藤氏はメインライターである自分が話し合いの場に呼ばれていないことに驚きつつも、会社員として働いていたこと、遠方に住んでいたことから参加することができなかった。話し合いの後、五藤氏は片嶋監督から『(脚本の)直しは荒井さんがやる』との連絡を受けていたので、脚本は改変前の形に戻すものだと思っていたそうです」(同前)

入山法子が演じた萩原慶子(映画公式Twitterより)

 しかし、五藤氏がクランクインのたった4日前に渡された決定稿には、荒井氏による改変箇所が残されていた。 

知らぬ間に変わった主演俳優「当初は東出ではなく…」

「結局、五藤氏不在で行われた打ち合わせの場では、荒井氏が五藤さんの同意を得ぬままに加筆修正した脚本が決定稿として採用されたようです。すでに準備を進めていた美術スタッフは荒井氏の改変に振り回され、現場は大混乱だったとか」(同前)

 改変後の脚本に五藤氏がどうしても納得できなかった理由の一つが、ヒロインである慶子のキャラクター造形にあった。

「五藤氏は慶子を夫のDVに晒されながらも力強く生きた女性として描いていたのに、荒井氏の脚本では“自由奔放で自分勝手な女”というイメージが強くなってしまっている、と感じたそうです。自分の名前が共同脚本としてクレジットされる以上、最低限カットしてほしいシーンをプロデューサーに伝えたそうですが、それも叶わなかった。

 しかも五藤氏は決定稿を見て初めて、主演俳優が当初聞かされていた窪塚洋介さんから東出さんに変わったことを知ったそうです。そんな自分がこの作品の脚本家であると言えるのだろうかと、五藤氏は思い悩んでいました」(同前)