12月9日に公開された東出昌大が主演を務める映画『天上の花』の脚本を巡って、訴訟トラブルが起きている。同作は新人の五藤さや香氏と『Wの悲劇』などで知られる荒井晴彦氏による共同脚本。五藤氏は荒井氏の弟子にあたり、荒井氏の指導の元、2年の月日をかけて脚本を完成させた。
映画化に向けて動く中で、五藤氏は荒井氏との共同脚本を受けいれたが、決定稿において荒井氏が五藤氏に相談なく脚本を改変。さらに、クランクアップ後にプロデューサーから提示された脚本料は10万円と受け入れがたい金額だった。
五藤氏は法廷で、荒井氏に対して脚本を改変したことへの謝罪と慰謝料の支払いを、監督の片嶋一貴氏に対して未払いになっている脚本料とを求めていく予定だという。
荒井氏、片嶋監督に質問状を送付し、事実関係を問い合わせたところ、プロデューサーの寺脇研氏、小林三四郎氏(太秦)を交えた四者が取材に答えた。そして東出も長文での回答を寄せたのだ。そこには「昨今の週刊誌報道の風潮」への東出なりの考えが綴られていた。(全2回のうち2回目)
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「作品をよくするための“改訂”だと思っています」
12月某日、『天上の花』の配給会社である太秦の一室に、製作陣である脚本家の荒井晴彦氏、監督の片嶋一貴氏、プロデューサーの寺脇研氏、太秦代表の小林三四郎氏が顔を揃え、一連のトラブルの経緯を説明した。
荒井氏は、弟子である五藤さや香氏から脚本を勝手に改変したことについて、謝罪を求められていることを認めたうえで、こう語った。
「僕の指導の元、五藤が『天上の花』を執筆したという経緯は間違いありません。映画化に際し、寺脇プロデューサーから資金やスタッフを集める都合で僕の名前がほしいと言われたので、弟子をデビューさせるためだと思い、脚本チームに入ることを了承した。名前がクレジットされる以上、僕も手を入れなければ嘘になってしまう。五藤が準備稿として提出した第10稿は、原作や史実と異なる点が散見され、修正しなければいけない個所が多くあった。確かに、戦争詩に関するシーンは足しましたが、基本的には作品をよりよいものにするための“改訂”だと思っています」
五藤氏は新人で、今作がデビュー作。師匠の目から見れば、五藤氏の脚本に甘さを感じる部分もあっただろう。脚本をよりよいものにし、彼女のデビューを成功させたいという思いで筆を取ったというわけだ。ではなぜ、両者はすれ違ってしまったのか。
#1で報じたように、映画関係者の証言によると、荒井氏は五藤氏の同意を得ずに修正した脚本原稿を監督に送付しており、それに五藤氏が疑問を持ったことがトラブルのきっかけになってもいる。
荒井氏はこう主張する。
「当初は五藤さんにメールで相談しながら直しを進めていたのですが、彼女が働いていることもあってコミュニケーションが取りにくい状況だった。クランクインが迫る中、ひとつの質問に対して『週末に図書館に行って調べます』と言うんじゃ、到底間に合わない。限界を感じていました。それで僕の方で直しを入れた第11稿を片嶋監督と五藤に送ったら、監督のほうに彼女から電話があって、それを削ってくれと。
これまで師弟関係でやってきたのに、僕が書いたものを削れとは何ていうことだと僕は思うわけですよ。僕自身も、自分が書いたものを師匠が書き直し、それを見て勉強してきた。彼女なら僕の直した脚本から、その意図をくみ取ってくれるものと考えるのも当然でしょう」