「日本最後の見世物小屋」である大寅興行社からオファーを受け、演出から出演までを一手に担う劇団「ゴキブリコンビナート」に、見世物小屋の裏舞台を聞くインタビュー。

 今回は「ヤモリ女」を演じるホリー・ポッターさんに、知られざる苦労や楽しみについて聞いた。(全3回の3回目/#1#2を読む)

「ヤモリ女」を演じるホリー・ポッターさん ©伊藤弘二

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彼女はなぜ「ヤモリ女」に変身したのか?

――動物愛護団体に抗議され、中止になったヘビ女もニワトリを食いちぎる芸もホリーさんが担当予定だったと聞きました。

ホリー・ポッターさん(以下、ホリー) もともとヘビ女をやっていた小雪太夫と劇団の折り合いがつかなくなり、私が代わりにやることになっていたんですが、私は結局一度もヘビを食べていないんですよね。

 大寅興行のお姉さん達がヘビを用意してくれるはずだったんですけど、山で捕まえてくる人が、すごい少なくなって捕れなかったと言っていて。「ごめんな~。ヘビ、捕れなかったんだ」みたいなこと言われた記憶があります。

 それでニワトリを食いちぎる芸だった予定が、動物愛護団体から抗議されてできなくなり、そのままヘビ女もできなくなった。そしてヤモリ女へと変わったものの、やっていることは同じで、ヘビ女でもヤモリ女でも大した変わりはないのですけどね。基本は「人間というものを知らない女の子」みたいな感じで。

©伊藤弘二

――虫を食べるテクニックみたいなものはあるんでしょうか?

ホリー 虫って、すごい小さいじゃないですか。小屋の舞台でヘビやニワトリを食べるのと比べると、やっぱり見劣りするんですね。なのでなるべく「ちゃんと生きてる虫を食べてるんだぞ!」とお客さんに分かってもらうため、まずこう……唇に挟むんですよ。挟むと、むちむち動く。ビチビチビチッ!と激しく動くのを利用して、しっかり見てもらうって感じですね。当然、虫も必死です。すると防御のためか、口の周りをすごい噛まれる。噛ませておきますけど。

 困るのは、鼻の穴へミールワームが逃げていこうとするとき。完全に鼻の穴に入ってしまったこともありました。その時はお客さんの前だったけど、慌てて「フン!!」と、鼻息で必死に追い出しました。