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――前回お話を伺ったDr.エクアドル氏は、「自分は虫は無理」と言っていました。

ホリー 私にとっては、Dr.エクアドルのやっている串刺しのほうが絶対やりたくない芸ですよ。

Dr.エクアドル氏の串刺し芸 ©伊藤弘二

 やっていて実際苦痛なのは、祭りの期間中、あの癖の強い劇団のメンバーと泊まり込みで何日もずっと一緒にいなくちゃいけないこと。イヤすぎます。男性はステージで寝たりして、ひとりになれる時間も場所も全くない。

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 逆に大好きなのは、自分の演目と、大寅興行のお姉さんたちと過ごす時間です。見世物小屋が終わるとお姉さんたちがご馳走を用意してくれていて、それを皆で囲んで食べる時間はとても幸せです。

「女の子がワニに頭挟まれちゃって!」

――そういった場で、昔の見世物小屋のお話などは聞かせてもらえるのですか?

ホリー たまにありますね。その世界で有名だった人の話とか。生き物の話では、見世物小屋で飼っていた大蛇が逃げ出してしまい、多摩川あたりを泳いでいたのがニュースに流れたとか。移動動物園をやっていた時代に、メンバーがワニに噛まれたとか。

「あの女の子がワニに頭挟まれちゃって!」みたいな。今でも頭の上の方に噛まれた穴があるんだとか。子どもの頃持ち家がなく、親御さんについて見世物興行で旅をして、60回くらい転校したみたいなお話も伺いました。だからあんなにタフなんですかね。興行の方々って、もう高齢者といっていいお歳だと思うんですけど、それでも1日中ずっと働くんですよ。

 私がヘットヘトになっているのに、お姉さん方は疲れを感じさせない。今の私たちみたいに、普通にこうバイトしながらとか仕事しながらみたいな体の動かし方ではちょっと追いつけないぐらいの働きぶりなので、圧倒されますね。

「そんなおおらかなところも、大好きです」©伊藤弘二

――ご自身は、見世物小屋を見に行ったご経験は?

ホリー 全くありません。演出に沿ってそのままやっていますが、個人的に見世物の歴史に興味はあるので、映像を見て参考にしたりはしています。やっぱお客さんも、ちょっと寺山修司的な世界を期待して来ると思うので。大寅興行のお姉さん達とも、少しそういった類の話をしたこともありました。

 ところが「見世物なんて、みんなものすごいいい加減だったし、それぞれの小屋が、それぞれのやりかたで、やりたいことやってただけ」と言われました。そんなおおらかなところも、大好きです。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。