大学生時代の森喜朗は安保反対運動に対抗して安保賛成運動をしていた。そこで出会った自民党議員に「君はどこに就職したいのか」と聞かれ、新聞社だと答えると「それなら産経新聞の水野成夫君を紹介してあげよう」と言われる。水野氏は紹介状に目を通し、「わかった。担当者に話しておこう」と言った。
これで入社は決まったと喜んだ森喜朗だが、卒業が近づいても産経新聞社からは何の連絡も来ない。人事担当者に「水野社長はそう言ったかもしれないが、うちは経営再建中で新人の採用予定はない」と言われる。しかし、へこたれない。
「試験は絶対に受けない」と白紙の答案を提出
《しばらくして「採用試験をやるから受けろ」と連絡があった。私は「試験をやって、その成績が悪いのを理由に採用しないつもりだな」と思ったので「試験は絶対に受けない。水野社長との約束を守ってほしい」と言い張った。》(同前)
すごい。つまり、「さては試験をやって俺の頭の悪さを証明するつもりだな! その手には乗らん!」という作戦である。自分のことを知り尽くす森喜朗。しかし担当者が「試験を受けないと採用しない」と言うので、
《仕方なく試験は受けた。試験では白紙の答案を出し、最後に「天下の水野社長は前途有為な青年をつぶしてはならない」と書き加えた。》(同前)
ここまでくると図々しさに感心してしまう。
これらは自著である『私の履歴書 森喜朗回顧録』に普通に載っている。こんなことばかり言って、日経新聞での連載時には問題にならなかったのだろうか? すると2013年12月に出版されたある本で次の箇所をみつけた。
対談相手が「こう言っちゃ悪いけど、森さんは産経も早稲田も試験を受けずに入ったわけね」と尋ねると、森喜朗は陽気にこう答えている。