2022年の夏は猛暑が続いたことや地方公務が続く秋に備え、宮内庁職は両陛下に那須でのご静養をしていただきたいと考えていた。両陛下も一時は検討なさったと言われたが、新型コロナ感染者数や「都道府県をまたぐ移動」となってしまうことを鑑みて、見送られたという。
天皇ご一家は御所で静かにお過ごしになり、たまに陛下と雅子さま、陛下と愛子さまという組み合わせでテニスをなさったり、職員を交えてバレーボールを楽しまれたりした。身体を動かすことも、公務に繋がる体力作りとして必要なことの一つだとお考えになっているためだ。
「陛下はジョギングをなさっていましたが、以前とまったく速さが変わらないので驚かされます。健康維持のために、雅子さまと少しダイエットをなさったと言っておられました」(宮内庁関係者)
夏休み中、大学の課題の提出やレポート作成をなさっていた愛子さまは、合間を見て無事に成虫になった蚕の卵を採取されたという。飼っている犬や猫、カメなどと同じように成長を見守る喜びを感じていらっしゃるようだ。
ご夫妻は“異例”の葬儀参列を強く求められた
8月10日、雅子さまは今年2回目の単独公務を務められた。
第48回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式に日本赤十字社の名誉総裁としてご出席。3年ぶりに看護活動に顕著な功績や功労のある人たちを顕彰なさった。雅子さまは、受章者それぞれの活動について熱心に質問を重ねていらしたという。出席した看護師の中には、「皇后さまは、立場はまったく違いますけれど、言葉の中に仕事を続けて来られたことの大変さや喜びが詰まっているような重みが感じられました」と語っていた人もいた。
英王室は9月8日、エリザベス女王が滞在中のバルモラル城で死去したと発表した。英国政府から国葬の招待状が日本に届いたのは、9月10日のことだ。
陛下は訃報を聞いた瞬間から、ご夫妻で参列する意向を強く持たれ、西村泰彦宮内庁長官に英国行きの意思をすぐに伝えられたといわれる。
皇室と英国王室の親交は深い。昭和天皇、平成の天皇から陛下へと三代に渡って受けつがれてきた。だが天皇が外国の王室や元首の葬儀に参列するのは、皇室の慣例からすると異例なことだった。
「1993年に在位中の上皇陛下がベルギーのボードワン国王の葬儀にご夫妻で参列なさったことはありましたが、あれはご夫妻同士の長年の交流があったからこそ。以来、例はありません」(元宮内記者)
天皇陛下の即位後初の外国訪問は英国になる予定だった。エリザベス女王の招待を受け、2020年の春に皇后雅子さまとご一緒に訪問することになっていた。だが新型コロナウイルスの感染拡大で延期せざるを得なかった。
そういった事情もあり、陛下の葬儀参列のご意思は堅かったが、雅子さまのご体調にはまだ不安があった。回復傾向であっても海外訪問までできるかは定かではない。ご公務の出席はまだ「陛下お一人」と発表されており、雅子さまは予定が近くなった時の定例会見でご同行されるか否かを発表するというスタンスが続いていた。宮内庁幹部も「完全快復までには至っていない」と話していた。
女王の葬儀は9月19日。いちばんの問題は英国出発までに体調を整えられる時間が少ないことだった。雅子さまのご病気は、ご自身でお気持ちの準備をする必要がある。体調によっては長くかかることもあるため、これまでにもご出発までに整わない場合は欠席ということもあった。雅子さま自身、自信が持てないご様子で、予断を許さない状況だった。
ジャーナリストの友納尚子氏による寄稿「雅子さま 英国ご訪問で安堵の涙」は、「文藝春秋」2023年1月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。
雅子さま英国ご訪問で安堵の涙