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交友関係の徹底的な洗い出し

 一方、Hさんの交友関係についても、徹底的な洗い出しがなされていた。彼女が暮らしていた女子寮にいた同級生が明かす。

「事件が起きてすぐ寮生全員が大学内の一室に集められ、警察から事情を聞かれました。Hさんの人となり、当日の夜、私たちが何をしていたか、バイト先はどこか、帰り道のルートはどこを通るのか。それらを細かく聞かれました」

 事件発覚から1、2週間後には、顔見知りの犯行である可能性は低いと結論付けられていたという。

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 捜査の焦点は、猟奇的な遺体の解体方法に移っていく。遺体は、内臓の一部が取り出された形跡があり、大腿骨の肉も、鋭利な刃物と見られるもので人為的に削ぎ取られていた。先の元捜査関係者は語る。

「遺体が残忍に切り刻まれていたため、合同捜査本部では犯人像について、猟奇的な性向をもつ人物であると、プロファイルしていた。レンタルビデオ店でホラー映画を借りた人物や、刃物店やホームセンターで鋭利な刃物を購入した人物を一人ずつつぶしていきました」

遺体の一部が見つかった臥竜山に黙祷する捜査員 ©共同通信社

 だが、そうしたプロファイリングによって捜査が長期化したと、その元捜査関係者は指摘する。

「犯人像は狭まるどころか、どんどん拡大していった。あまりにも遺体が鮮やかに解体されていたため、猟師や、解剖の知識に長けた医療関係者にも捜査の網は広げられた。さらにはHさんがロシア船の入港イベントに1度だけ参加したことから、ロシアの特殊部隊関係者説まで出ていました。捜査員の“思い込み”が捜査の偏りを生み、時間がかかったとの指摘があります」

「一人暮らしの家に、刑事2人が突然やってきました」

 事件発覚の翌年に私は、09年11月に捜査対象としてマークされた2人の男性に話を聞いている。

 島根県立大学大学院に通うBさんは、学業の傍ら、臥龍山を管轄とする林業の仕事に就いていた。

 Hさんが行方不明となった日の深夜、彼は大学の研究室からNシステムがある道を通って自宅に帰っていたのである。

「11月後半の夜9時半頃、一人暮らしの家(広島県内)に、刑事2人が突然やってきました。刑事は私の車が10月26日の夜遅くに金城を通っていたから来たと言い、当日の行動について聞かれ、風呂場を見せてくれと言われました。あと、家にある刃物を見せるように言われました。ノコギリよりもナタや包丁を気にしていたので、鋭利な刃物が遺体の切断に使われたのだと思います」

 2人の刑事は、1日空けて、Bさん宅にふたたび姿を見せた。

「大学に何時まで残っていたのかを調べたいと言われたので、研究室でパソコンを使用した時間を話しました。パソコンを閉じた後、すぐ帰り、途中でコンビニに立ち寄ったことを説明しました。コンビニの防犯カメラに映像が残っていたようで、後日、時間的に話の辻褄が合うから問題ないとの説明を受けました」

文藝春秋

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