誰もが熱狂するものはたいてい壮大な落とし穴が待っている
金融の歴史を紐解けば、それこそオランダのチューリップ球根投資や南海泡沫事件、ごく最近もネットバブルの崩壊といった、誰もが熱狂するものはたいてい壮大な落とし穴が待っているという残念な事例が多数転がっていることを知ることができます。中古でいいからエドワード・チャンセラーの『バブルの歴史』を是非読んでみて欲しいんですよ。世の中、そんないいことばかりは続かないようにできているんです。
さらには、暗号通貨の取引所最大手を自任する会社が、100億円の営業利益を引っさげて株式上場したいらしく投資家界隈にレポートを書いておるわけですよ。あっ、そうですか。曰く、取引の80%以上がレバレッジ取引とのこと。え、取引額のかなりの割合が全力2階建とか大丈夫なの。相場が下落したら屋上でウェイウェイやってた投資家全員墜落して死ぬじゃん。サービス内容よく見たら、投下した元金の15倍の取引が行えるハイレバレッジ商品まで提供しているじゃないですか。
相場として必要な機能が必ずしも備わってない
これは死ぬ。素人は絶対に死ぬだろ。この会社に限らず暗号通貨取引についていうならば、暗号通貨の値段が決定する約定のシステムはハイビットレートではあるものの、売りと買いのスプレッド幅が大きいうえに、決済が不能なら1時間近く、下手すると4時間とか待たされる。つまり何を言いたいのかというと、手持ちの暗号通貨の相場が下落したのでお前が売りたいと思っても、いま表示されている金額で売れる可能性は皆無で、相場が下がりきってから「約定しました~」といってクソ以下の価格で取引されてしまうことがあるかもしれない。単純に言えば、暗号通貨の取引においては、相場として必要な機能が必ずしも備わってないってことじゃないですか。
そういう不安定な市場での取引で、システム上、高倍率のレバレッジがかけられるというのは「失敗した投資家は死ね」と言われているに等しい。というのも、レバレッジ付けて暗号通貨を仕込んだが最後、最悪数分、数十分で投下した金額が吹っ飛んだうえに負債が発生して、口座が強制クローズされかねないわけであります。これって、為替FXがいままさに「最大レバレッジを10倍までにしよう」と投資家保護をやってるネタと思い切り逆行するんすよね。
日経平均もニューヨークダウも続伸していますが……
そういう世界観の商品に暗号通貨がなってしまった、仮想通貨の面白さが結局は博打の具になってしまうというのは残念ではあります。だけど、この世の中には「暗号通貨が儲かる」という不確かな情報で動いてしまう個人がそれほどまでに多く、また調べもせずにお金を突っ込んでしまう人たちが大きな相場を作っているのだということを胸に刻んで、私たちはまた一歩、大人になっていくのでしょう。
そして、振り返ったとき「何だったんだろう、あれは」と思い返すことになるのです。
日経平均もニューヨークダウも続伸していますが、これが「あのとき楽観的にしていなければ良かったのに」ということにならぬよう。