末期ガンの妻とアルツハイマーの夫が示す“老いてからの愛”

　映画界の至宝ともいえる名脇役で、キーファー・サザーランドの父であるドナルド・サザーランドは御年83。老境の夫婦愛を描いたロードムービーで主役を演じた。50年連れ添った妻を演じるのは、オスカー女優ヘレン・ミレン（写真右）。夫婦はキャンピングカーに乗って、ボストンからフロリダまで旅に出る。

　妻は末期のガンを患い、夫はアルツハイマーが進行中。

「クルマは73年型のオンボロカーで、エンジンの効きが悪くてね。まるでフォルクスワーゲンでマチュピチュに登る感覚だった（笑）」

　長い夫婦関係を築いた人なら実感できるだろう。2人の関係は変わり続け、発展し、いつしか強い絆が生まれる。

「この映画は愛を描いていると思う。老いてからの愛をね。私自身、結婚してから46年くらいたつかな」

　監督はイタリア人パオロ・ヴィルズィ。イタリアから自分のチームを連れてきて、ゲリラ戦術のように撮った。まわりの誰も映画の撮影と気がつかないほどだったという。

「すべてが事前に決まっているハリウッド映画と違い、イタリア式は現場で感じたことを生かしながら撮影していくんだ。この作品は、最高のイタリア映画だともいえるね」