薬の副作用で20kgも太った思春期「セーラー服がSからLサイズになって…」
――そのときの喜びは?
後藤 すごくうれしかったです。ただ、薬の副作用で顔も体もむくんで、ニキビだらけになっていたし、私の不摂生もあってのことですが、入院前よりも20kg太っていたんです。
それまで着ていたSサイズのセーラー服が入らなくなっていて、親戚のお姉ちゃんからLサイズをおさがりでもらいました。最初に登校する日は、みんなからどう見られるのか、想像するのも嫌でした。
――思春期には、つらいですね。
後藤 15歳でしたからねぇ。せっかく復学できたのに、家では「学校に行きたくない!」って泣きました。
友達は気を遣ってくれました。でも私は今まで通りに遠慮なく接してほしくて、いっそ“ぽっちゃりキャラ”になりきることにしたんです。「自分からこの姿を笑ってしまったほうが、自分も友達も楽だ」と思って。
――15歳にしては、かなり大人な考え方でしたね。
後藤 頑張りました。あまり仲良くない子たちの当たりはきつかったです。ニキビを指して「顔、ちゃんと洗いなよ」って言ってくるんですよ。薬の副作用なので、顔が膨らんだりニキビができたりするのは、どうしようもないんですけど、傷つきましたね。
でも、もう一方で、病室で人生を終えることに比べれば些末なことに思えたんです。笑われたところで死ぬわけじゃないし、って。高校生になって以前の私を知る人がいない環境になれば、また変わるだろうと信じて、半年間をやり過ごしました。
「やりたいと思ったことは、一瞬も躊躇せずやろう」
――退院後に性格や考え方が変わったのでしょうか?
後藤 変わりました。日常に戻れても「私はきっと、人よりは短めな人生なんだろうな」という意識が頭のどこかに貼りついちゃってるんです。良くも悪くも、人生の残り時間を考える癖がつきました。
それまでは将来の夢もなかったんです。好きなことや、熱中できることもありませんでした。でも「やりたいと思ったことは、一瞬も躊躇せずにやろう。時間は限りがあるんだから」と考えるようになりました。
――それは、どういう……。
後藤 本当に些細なことから、です。たとえば、朝、高校に通学するときに、反対側のホームに電車が入ってくる。それを見て「いまの時期だと山側は雪が積もっていて綺麗だろうな」と思ったら、その電車に乗って雪を見に行く、とか。観たい映画があれば、いちばん空いている時間、つまり午前中に観に行って、昼から登校する、とか。
担任の先生が、いつも私の友達のクラスメイトに、「今日、後藤は?」って聞くから、友達が「私、邑子のお母さんじゃないんですけど」ってキレちゃうくらい(笑)。
問題児ということで、父親が学校に呼び出されたこともありました。父は同じ市内で小学校の教師をしていて、私の通う高校にも元教え子がたくさんいたので「どうか会いませんように」と職員室でドキドキしていたそうです(笑)。
ただ、人に迷惑をかけない限り「やりたいことを躊躇しない」という私の行動は、幼くて極端ではあっても、根本はそんなに間違っていない気がするんです。たぶん父にしか迷惑かけてないはず(笑)。