ジブリ映画『となりのトトロ』(1988年)が8月19日に「金曜ロードショー」で放送される。メイの姉・草壁サツキを演じた声優の日髙のり子さん(60)は、実は作品名も知らないまま、ぶっつけ本番でオーディションに臨んだという。当時は「『絶対だめだ。落ちた』と思った」と話す日髙さんに、異例ともいえる形式のオーディションでサツキ役を射止めた意外な理由、元気いっぱいの小学6年生を演じることの難しさと楽しさについて伺った。(全3回の1回目/#2、#3に続く)
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「帰りに、ひとつオーディション受けていってよ」
――『となりのトトロ』は、文春オンラインで実施したアンケート「あなたが選ぶジブリ映画 ベスト1は?」(2020年)でも1位に選ばれました。この大名作に日髙さんが関わった経緯からお聞きしたいのですが、どういった形でオーディションを受けられたのでしょうか。
日髙のり子さん(以下、日髙) 『となりのトトロ』の音響監督を務められた斯波(しば)重治さんから、声をかけられたんです。「帰りに、ひとつオーディション受けていってよ」と言われたんですね。斯波さんとは『らんま1/2』(フジテレビ、1989~1992年)でもご一緒させていただいて。
――最初のオーディションの時点では、作品名を教えられないままで。
日髙 どんな作品なのか説明はなく、まず絵コンテを渡されました。絵を見た瞬間に、そのテイストから宮崎駿さんの作品だというのはすぐにわかりました。そこには初めて見るサツキちゃんとメイちゃんの姿が描かれていて、吹き出しのような形でサツキちゃんのセリフも書かれていました。なので、本当に何の準備も心構えもなく。
「あれは絶対に宮崎駿さんの作品だと思う!」
「この赤い丸で囲んであるセリフを読んでくれる?」と指示されたのが、サツキちゃんのセリフだったんです。当時、私は子供の役をやったことがなかったので、斯波さんからも「小学生の役、演じたことはないよね?」と聞かれて「はい」って。「じゃあいつもと同じでいいんだけれど、ちょっとだけ声を高めに出してみて」みたいな感じでセリフを読んでいきました。
――そうした突発的なオーディションは、珍しいものですか?
日髙 事務所を通しての連絡ではなくて、アフレコの現場で私に直接ですからね。逆に私がマネージャーさんに「今日、斯波さんに言われてオーディションをひとつ受けてきたの。あれは絶対に宮崎駿さんの作品だと思う!」って、報告しましたよ(笑)。
――それ以前にも何度か、「宮崎監督の絵だ」とピンときた作品のオーディションを受けたことはありましたか?