『タッチ』浅倉南、『となりのトトロ』草壁サツキ、『らんま1/2』天道あかねなどのヒロインを演じ、近年はETC車載器の音声なども担う声優の日髙のり子さんは、一昨年に歌手デビュー40周年、今年5月には60歳の誕生日を迎えた。長年第一線で活躍する日髙さんに、心身のメンテナンスや、ようやく「力を抜いて、頑張らないように」と切り替えられたきっかけについて、最後に伺った。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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「将来結婚して子供が生まれたら見せたい映画です」
――40年にわたる芸能活動で、日髙さんは第一線を走り続けていて、まったくブランクを感じさせません。プライベートでいうと、結婚されたのはいつ頃でしょうか。
日髙のり子さん(以下、日髙) 1992年に29歳で結婚しました。26歳で『となりのトトロ』(1988年)にサツキ役で出演しましたが、その頃は結婚の「け」の字もなかったですね。それもあって当時のインタビューで、すごく遠い目標、遠い未来として「将来結婚して子供が生まれたら見せたい映画です」なんて話しているんです。
実際に子供が産まれたのが96年だから『トトロ』の8年後。でも、20代~30代の8年って長く感じましたね。
――たとえば、育児と仕事の両立で悩んだ時期はありましたか?
日髙 子供が産まれて、まずは仕事に出る日を半分にしようと考えまして。まったく休むと戻れない、自分の居場所がなくなっちゃうような厳しい世界でもあるので、子育て期間のうちは細く長く続けていこうと。
仕事を続けられたのは、母の協力があったから
そう決めたにもかかわらず、仕事の日に子供が熱を出したりするものなんですよね。あの頃を振り返ると、私にとっても事務所にとっても大きな仕事を任された時、資料をチェックしてマネージャーさんに意見を伝えなきゃいけないのに、子供の具合が悪くなって「まだ見てないの?」とマネージャーさんに怒られることもあったりと、なかなかうまくいかないことは少なくなかったと思います。
――とはいえプロフィールを拝見すると、どの時期も出演した作品数は多いですよね。
日髙 仕事を続けられたのは、私の母の協力があってこそです。幼稚園に入る前は、実家へ預けたり、うちに母が来てくれたり。幼稚園に入ってからは園のお友達のお母さんが「うちで預かってあげる」と言ってくれて、ご飯まで食べさせてくれて、時にはお風呂にまで入れていただいて。ものすごく助けてもらいましたね。
うちは0歳の時に子供を母に預けていたので、保育園に入りそびれたんですよ。保育園は0歳から入園を申し込まないと、枠がいっぱいで途中入園が難しくなっちゃう。そういう事情があって、母がくたびれたらベビーシッターさんをお願いしたりと、とにかくバタバタしていましたね。