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「ストイックなものからは逃げたいタイプなんです」

――日髙さんは、柔和なご印象とはちょっと対照的に、ご自身とストイックに向き合っているということをお話の端々から感じます。

日髙 そう見えますか? ストイックなものからは逃げたいタイプなんですけど(笑)。父は体作りにはうるさかったですから。たとえば、生姜焼きにキャベツの千切りが盛り付けてあったら「肉を1枚食べたら、その倍は野菜を食べろ」みたいなことを言う人だったので、そういうのが自分のなかに残っているのかも。

 なので歌手として1980年に芸能界デビューした当初は、ものすごく元気でしたよ。血色が良いというか、顔が真っ赤。けれど、だんだん忙しくなってきて、生活が不規則になって。結婚して出産して、そこで改めて自分の体作りと向き合う、みたいな。おかげで、今も元気にやれています。

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日髙さんの著書『天職は、声優。』

還暦を迎えてから「力を抜いて、頑張らないように」

――最近は対談で、「今は力を抜くのが大テーマ」と話されていましたが、そう思えたのはどういうタイミングでしたか?

日髙 「力を抜いて、頑張らないように」と切り替えられたのが、実は還暦を迎えてからなんです。それまでは、「そんなに頑張れない。でも頑張らなきゃ」みたいな考え方がしみついていて。だんだんと年齢を重ねていって、「頑張らなければいけない思い」が弱くなっている自分に発破をかけるような日々だったんですね。

 

 そもそもこの思考回路の根本には、私の子役時代があると思います。私が演じることを始めたのは、小学校4年生で劇団に入ってからなんですけれども、頑張らなければ役は勝ち取れないし、役を勝ち取ってもその公演を頑張らなければ次の公演でもいい役はもらえない。とにもかくにも「頑張る」は付き物だったんです。

 ただただ演じることが楽しかった少女だったんですよ。けれども「頑張らなきゃいけない」が先に立ってしまって、「なんかちょっと違うかも……」と感じたことがあって。