殺害行為をめぐって交錯する証言
舎弟B「殺害行為は、最後の方は見ていないですが、島田さんじゃない人が、首を絞めているのは見ました。その人は、元橋さんに言われないとやらないと思いますけど、自分でも島田さんでもない」
弁護人「手で首を絞めた人が、後日キャバクラで『自分がとどめをさした』と言っているのを聞きましたか?」
舎弟B「殺した本人が言いふらしているのを見たことがあります」
逮捕当時にBは「自分が起訴されるのが怖かった。検事さんの機嫌を損ねたくなかった」と、認識と異なる調書にサインをしたとも明かし、尋問の最後には「違うことは違うとはっきり言いたかったんで」とも述べていた。
「自分がとどめを刺した」と吹聴していた……そんな疑惑のある、3人目の舎弟Cは、Aと同じように島田被告による殺害行為だと述べた。
「被害者が倒れているところに、島田さんが首を押さえつけたり踏みつけたりした。元橋さんは念仏を唱えながら被害者の足元らへんに座り込んで、またがって、また念仏を唱えていました。元橋さんが3人に『押さえろ』と言いましたが、押さえてないです」(舎弟C)
共通の知人や元橋の運転手は、なぜか「途中で帰った」と証言している。
逮捕後に自殺していなければ、島田被告の共犯として確実に起訴されていたであろう元橋については、島田被告も述べていたように、他の証人も「薬物を使用していた」と証言。またCは島田被告と元橋の関係について「兄弟と呼び合っていたけど上下関係があるような、ないような。元橋が島田さんを小馬鹿にしているようなところがあった」と、島田被告が下に見られていたとも明かしている。
自殺した共犯の男の交際相手は
このように現場にいた者たちの、殺害時の証言が一致しないが、事件当時、被害者に罵声を浴びせていたという元橋の交際相手についての認識は共通していた。
「元橋さんと同棲していた彼女で、マドンナから『マド』と呼んでいた」
検察側冒頭陳述においても『マド』は元橋の交際相手として名前が挙がっている。ところが、当の『マド』は証人尋問の際、検察官に問われても「(交際していた事実は)ありません!」と、元橋と恋人関係にあったことを、なぜか何度も否定した。
さらに弁護人からの質問には、元橋が生前、いかに粗暴な男だったかをノンストップで語り始めた。
「一緒に住んでいません! 元橋は、怖い印象。しつこい。本当にしつこい。言うことを聞かないといけない状況にされた。家のガラス割って入ってきたり、金品取られたり、暴力もあった。蹴る、殴る、ライターの火を押し付けられる、ライターで炙られる、首を絞められたことは何度もあります。殺されるしか思っていません! 裸にされたこともあります。突然です! 突然です! 殴られたり蹴られたり、突然本当に変わります」
だんだんと興奮してきた『マド』に、弁護人が「なぜ?」と問うと「分かりません!」と声を荒らげ、泣き叫びながら言った。
「もうこの質問するんだったら答えられません! こんなことであれば! 答えられません! 私もうできません!!!」
こうして唐突に「マド」の尋問は終わったのだった。