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バラバラにした遺体は冷凍庫に

 バラバラにした遺体は、被告の親戚の会社の冷凍庫に一時保管した。場所を変えたのは、「自分の会社と違って、いつでも出入りができる」ということからだ。元橋が「なんとかする」と言っていたことから、彼とその配下の人間がいつでも入れる場所を選んだのだそうだ。ところが今回も、元橋は遺体を「なんとかする」ことはなかったのだという。

「最初、元橋から『ミンチにしてくれ』と言われたんですが『無理だ』と答えた。『じゃあ細かくしてくれ』と言われたので、解体したが、元橋は引き取りに来ず、連絡もない。さらに、こっちから連絡しても、連絡がつかなくなった。運転手に連絡すると元橋は『Cと一緒に覚醒剤を打ってホテルを転々としていて自分も連絡がつかない』と言われた」

 親戚の会社の冷凍庫に遺体を運び込んでから時間だけが過ぎた。その状態で遺体が見つかれば、真っ先に疑いをかけられるのは島田被告である。島田被告は7カ月後、1人でその遺体を処分場に運んだ。

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弁護人「殺すことには同意してなかった?」

被告「はい。最終的な手も下してない。手を下す必要も殺す必要もない」

弁護人「ロープや手であなたが被害者の首を絞めたり、足で踏んだりした?」

被告「もちろん、してないです」

 島田被告の証言によれば、被害者への暴行は元橋がきっかけであり、最終的に死に至らしめる行為も、元橋やその舎弟らが行ったという。しかも、遺体を解体して遺棄する行為は、元橋に半ば押し付けられ、止むに止まれぬ状況で行ったことが証言からはにじむ。だが、判決では、被害者にとどめを刺したのは島田被告であり、遺体の解体や遺棄も島田被告が中心となって行われた、と認定された。

さいたま地裁  ©時事通信社

「このまま帰したら警察にウタっちゃうよね」

 弁護側の冒頭陳述によれば、元橋は遺書に「3人の舎弟のうちCが首を絞め、Aが足を押さえた」といった内容を記していたのだという。だが、判決は、まさにこのAとCによる「島田被告が首を絞めた」という証言を“信用できる”とした。

 公判にはその元橋の3人の舎弟、そして運転手、交際相手のほか、共通の知人が証人出廷したが、おのおのの言い分は異なっていた。いずれも別室から画面越しに参加するビデオリンク方式で行われ、その姿は傍聴席からは分からない。

 1人目の舎弟Aは、暴行を受けたのちに全裸で縛られ、フロアに寝かされていた伊藤さんについて元橋から「『このまま帰したら警察にウタっちゃうよね』とか『マグロ漁船に乗せる』という話があったと思う」と語り、殺害時は「島田さんが被害者の胴体に尻を乗せて被害者の首を絞め始めた。その後体勢を変えて、足で首を踏み潰すように、グリグリとやっていた」と、殺害行為は島田被告によるものと証言した。

 ところが、続けて2人目の舎弟Bは、全く違うことを述べた。まず検察官からの多くの質問に「刑事訴追のおそれがあるので証言拒否します」と、詳細を語らなかった。一方弁護人からの質問には「取調べの時から『島田さんが殺したんじゃないんですよ』という説明はしました」と、殺害は島田被告とは別人が行ったと語る。