舎弟AとCの証言だけが一致
それぞれの証言がバラバラだが、判決では、「首を絞めた」と事件後に吹聴していたという舎弟C、犯行当時に被害者の体を押さえていたと元橋が名指しする舎弟Aの証言が事実だと認められた。なぜなら2人の証言だけが一致していたからだった。
「その信用性に疑問を差し挟む事情は見当たらず、各供述が一致していることも踏まえれば、その信用性は高いものと認められる」(判決より)
AとCが、自身の犯行を島田被告に押し付けたという可能性について、裁判所は「すでに死亡した元橋からは報復等の心配がないのに、元橋ではなく、現役の暴力団員で、報復等の心配がある被告人だと(2人が)述べている」と、死んでいる元橋に押し付けなかったことから信用性が高いと判断している。島田被告が遺体の解体を実行したことも、殺人に関与していないのであれば不自然であると裁判所は指摘した。
しかし仮に殺人を行なったのが元橋だけという形式になれば、彼は既に亡くなっているので、誰も起訴することはできなかっただろう。「元橋の舎弟Cが首を絞めたと吹聴していた」という件について弁護人や証人が言及しようとすると、検察官はたびたび異議を唱え、証言を止めさせていた。
埼玉・西川口の「ハワイアンバーLapule(ラプレ)」での事件で重要な役割を担った元橋は、翌年2017年5月23日、栃木・宇都宮で男性(78=当時)宅に押し入り宝石などが入った金庫や腕時計、計500万円相当を奪ったという強盗致傷事件を起こし、2018年1月に逮捕されている。これは元橋を含む7人による犯行であるとされ、逮捕者の中には「マド」もいたが、彼女は不起訴処分となり釈放された。
さらに元橋は宇都宮の事件の直前、福井市の男性を乗用車に監禁して市内を連れ回しながら金属バットで殴り、鼻骨を折るなどの怪我を負わせた逮捕監禁致傷の疑いで、2018年2月に逮捕。そのうえ大麻を譲渡したという疑いでも逮捕された。
最終的に宇都宮の事件で起訴された元橋には、2018年12月14日、宇都宮地裁で懲役15年の判決が言い渡されていた。「Lapule」の事件について匿名の情報提供がなされた時期でもある。
島田被告の控訴について、担当弁護人は判決言い渡し後「本人の意向を聞いて決める」とコメントした。