今年8月2日、嘉田氏は市民団体の求めに応じて海老川上流地区を視察した。海老川下流の細さに驚き、次のようにコメントした。
「いくつもの支川が、あんなに細い海老川に流れ込んでいく。下流には人口密集地が広がっていますから、溢れたらそこが被災する。だから上流を全面盛り土で埋め立て、コンクリートで固めるのは非常に危険です。
ここはまちがいなく流域治水が必要な場所です。もし開発するなら、一部を掘り下げて川の水を逃がす場所を作ったり、高床式建築を取り入れたり、木々を植えて土地の保水力を高めるなどすれば、治水安全度が上がるのではないでしょうか。そしてそれをやるのは船橋市と、海老川の河川管理者である千葉県です」
県の審議会も洪水の危険を指摘
一方で、病院が新しくなり、新駅ができることに期待する市民も多い。また、「あそこは耕作放棄地が多くて草ぼうぼうだし、資材置き場があったりして、他人事ながらあのままにしておくのはどうかと思う。土地区画整理事業できれいに整備するのはいいことなんじゃないの?」と言う人もいる。
しかし実はこの事業、今年1月の千葉県都市計画審議会で洪水の危険ありとされているのだ。会議では市が洪水のリスクを検証していないこと、市民説明会を拒否していることに対し、「見過ごすことができない」「許されるものではない」などと厳しい意見が相次いだ。
最終的に事業は採択されたが、「事業の治水への影響を検討し(安全性の検証)、住民に対し丁寧な説明を重ねること」という異例の付帯意見がついた。
この付帯意見に強制力はないが、市はこれを受け入れた。2月半ばから始まった議会に事業の今年度予算案を提出し、いつでも工事を開始できる態勢を作りながらも、組合に安全性の検証結果が出るまで工事を延期するよう申し入れたのである。これで4月から始まる予定だった工事は延期を余儀なくされた。