沢 ニューヨークの不妊治療専門病院の中でも最も妊娠率の高いと言われる評判のクリニックに行ったのですが、開口一番言われたのが、「なんで自分たちの卵子と精子を使うの?」(笑)。「このラックに並んでいる、若くて優秀な精子と卵子を使ったほうがよっぽど安心よ」と、その後も何回か先生に勧められました。
――不妊治療先進国という感じがします。精子・卵子ドナーが選択肢として当たり前なんですね。
沢 精子バンクのサイトにはその人の子どものときの写真と人種、身長や出身大学、髪の色、目の色などがデータとして全部書いてあって、微妙に値段が違います。見ているだけで興味深いですよ。
アメリカだと、血縁ってほとんど皆さん気にしないんですよね。離婚率が高いのでステップファミリーも普通ですし、養子も多い。黒人の子供に、白人のお母さんがいたり、お腹が大きくならないままいつの間にか赤ちゃんがいたり、ナニーが子どもを見ていることも多いので、人種や年齢、性別、離婚歴なんかで家族のかたちを規定しないというか、「家庭ごとにいろいろなのは当たり前」という空気があります。
私自身も、アメリカ人の夫の連れ子も育てているので、ステップファミリーです。
「50で出産なんて、子どもがかわいそう」という声
――日本だとまだまだそこまでオープンな雰囲気はないですね。
沢 私の場合、日本で不妊治療をしているときのほうがストレスが大きかったんですけど、何故かなと考えてみると、日本にいると人目が気になっちゃうんですかね。
アメリカでは年齢も聞かれないので、私が50代で出産したことを職場の人たちは知らなくて。だから、ただ「おめでとう!」ってだけ。
逆に、日本の知り合いには一切、妊娠を伝えませんでした。高齢出産なので母体も子どもも無事でいられるかまったくわからなかったし、色々言われるかなと思って、産後2、3ヶ月経ってから報告しました。
――高齢出産について、日本では厳しい声があると思いますか。