「私たちが後からスナックに着くと、稲掛さんと新田さんは離れた席に座って会話もなくとても静かになっていました。聞いた話では1次会のお会計の話でどっちが多く払ったとか、払っていないとかで揉めていたようです。行きつけの店もカブっているので、お互いに『あいつにツケといて』と“ツケ払い”を押し付けあって少し問題になったこともあり、関係はよくなかったですね」
2人のもめごとは金銭問題だけでなく、「どちらが女性にモテるか」という“男のプライド”の戦いも繰り広げられていたという。
そして忘年会がお開きになり、参加者がばらばらと店を出ていくと、先に退店していた新田さんが血を流して倒れており、稲掛容疑者が自転車で去る後ろ姿が見えたという。
「仕事が長続きしない感じのやつだったからな」
稲掛容疑者が発見されたのは年が明けた1月1日、現場から約80キロ離れた兵庫県・姫路市だった。
「稲掛容疑者はかつて姫路市に住んでいたことがあり、逃走先に選んだのでしょう。発見時、警察官の職質に対して『ミヤザキです』と嘘をついて逃れようとしましたが、すぐにバレて逮捕。稲掛容疑者には他にも複数の前科があるようです」(前出・社会部記者)
稲掛容疑者は中学を卒業してすぐに働きはじめ、職を変えながら住居も転々としていた。大阪市西成区に身を置いていたときは、日雇い労働をしながら月3万9000円の共同住宅に住んでいた。現在その共同住宅で生活する70代男性はこう話す。
「1フロアに10部屋あって、全て3畳くらい。狭くて汚いけど俺らにとってはちゃんとした家ですよ。人の入れ替わりは激しいけど、風呂トイレは共有だからここで生活してる奴らは短いやつも長いやつも顔見知りみたいなもん。稲掛容疑者のことも覚えてるよ。10年くらい前だと思うけど、そんなに長くはいなかったんじゃないかな。ここでの生活が嫌というより、仕事が長続きしない感じのやつだったからな」