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ストレスが病因なのか、ストレスでお酒やタバコを摂取することが病因なのか

 コホート研究は世界中で行われていて、日本では国立がん研究センターを中心に行われている「多目的コホート研究(JPHCスタディー)」などが有名です。先日もこの研究の成果として、「長期間にわたる自覚的ストレスは全がん罹患のリスク上昇と関連している」という結果が発表され、ニュースになりました。

 コホート研究は、どんな生活習慣ががんや心筋梗塞、脳卒中などのリスクになるかを明らかにするのに非常に重要な研究です。多目的コホート研究などの成果があるからこそ、「喫煙や過度の飲酒ががんのリスクを上げる」とか、「適切な運動をすれば脳卒中や心筋梗塞のリスクが下げられる」といったことがわかってきたのです。

 ですが、コホート研究には証拠力に限界もあります。たとえば、ストレスが強いほどがんリスクが高いという結果が出たとしても、本当はストレスが原因ではなく、ストレス解消のためにタバコを吸ったり、お酒を飲んだりする頻度が高いために、がんになりやすいのかもしれません。このようなデータを偏らせる要素(バイアス)が入り込みやすいので、ランダム化比較試験より証拠力が弱いとされているのです。

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母数がたった40人であることに注意すべし

 ですから、今回の卵の研究結果についても、「もしかしたら、卵をたくさん食べ過ぎるとよくないのかな」くらいに思っておけばいいのではないでしょうか。それに、研究では他の群は200~1000人以上なのに、1日2個以上卵を食べる人たちの群は40人と極端に少なくなっています。統計的に意味のある差が出たとしても、母数が40人だと1人か2人病気の人が増えるだけで結果に大きな影響を与えてしまう可能性があるので、この分析には少し疑問も感じます。

 だからといって、この研究が無駄だと言いたいわけではありません。卵を食べ過ぎるとよくない可能性があることを教えてくれただけでも、大きな意味があると思うからです。この論文の研究者の方々にも、最大限の敬意を払いたいと思います。ただ、本当に卵を食べ過ぎるとよくないのかどうかは、さらなる研究の結果を待つべきでしょう。

卵には人間に欠かせない栄養素がバランスよく含まれている

 ちなみに、多目的コホート研究を調べてみたところ、「卵の摂取量と心筋梗塞の発症とは関係なし」「卵の摂取量が多くても糖尿病発症リスクは上がらない」という研究結果がありました。しかし、卵とがんとの関係について調べたものはありませんでした。

 卵にはたんぱく質やミネラル、ビタミンなど、人間に欠かせない栄養素がバランスよく含まれています。様々な料理、加工食品、調味料などに含まれ、人間の食生活に欠かせません。卵を排除してしまったら、どんなにつまらない食生活になることでしょう。もし食べ過ぎに多少のリスクがあったとしても、卵を避けるなんて考えられません。

 私もマヨネーズ大好きです。食べ過ぎに注意しつつ、今日もおいしく卵をいただきましょう。

参考)ケアネット「卵の摂取量、がん死亡率と関連~日本人女性」2018年1月12日付