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通常国会“紙面チェック” 社会面にみる「朝日らしさ」

通常国会“紙面チェック” 社会面にみる「朝日らしさ」

オンラインでは味わえない「記事並びの妙」

2018/02/02
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憲法観では対立する朝日と産経が「猿クローン問題」で一致

 憲法観では異なるが、こちらの分野では「朝日」と「産経」が一致していた。

「中国でサルのクローン誕生」のニュースを受けて「産経抄」と「天声人語」が同日(1月26日)に取り上げたのだ。

 まず産経抄。

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《さすが、自分の毛を吹いて次々に分身を作り出す「孫悟空」の国、などと感心している場合ではない▼クローン人間作りは、倫理と科学的な安全性の両面から、欧米諸国や日本では禁じられている。ただ科学技術の分野でも世界の覇権を狙う中国で、研究の暴走を押しとどめられるのか、はなはだ疑問である》

まさかの一致!

 そして「天声人語」。

《ただ成功したのが中国というのは気になる。独自の尺度で物事を進める国である。やっていい事と悪い事の線をどう引くか、国際社会が問われる》

そして中国にキビしい

 中国に対して懐疑的なのが同じだが、文章の前半でクローン羊「ドリー」について触れているのもカブっていた。

《英国のイアン・ウィルマット博士らが1997年に発表した、クローン羊「ドリー」誕生のニュースは衝撃的だった。この技術を応用すれば、「クローン人間」、つまり人間の複製も可能になるからだ》(産経抄)

《英国でドリーという名のクローン羊が誕生した。1997年のそんなニュースが、どれだけ衝撃だったか。科学者はもちろん、政治家や宗教家をも動揺させた。このまま研究が進めば、クローン人間もありうると思われたからだ》(天声人語)

猿クローン誕生を発表した中国科学院 ©getty

 新聞を擬人化すればおじさんである。おじさんにとっていかに21年前のクローン羊「ドリー」が衝撃だったかわかる。

 朝日「天声人語」おじさんは「中国サルクローン」に対し、

《大ニュースだが、ドリーほどの衝撃がないような気がして仕方ない。》

 とまで言い出す始末!

 政治や憲法では論調が違えど「新技術」へのおじさんの視線が同じで味わい深かったのである。

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