情報提供を受けた弁護士Tがそのアドレスにメールを送ると30分もたたずに関戸から返信が来た。「なぜこのメールアドレスを知っているのか」と。関戸が疑心暗鬼になるのも無理はなかった。息子の通う保育園の情報までが筒抜けになっている。包囲網はすぐそこに迫っていた。
“騙し取られた”金を一部でも取り戻そうと裁判を決意
関戸の動きは早かった。Tとの間でメールのやりとりをした当日、関戸は自分の弁護士を帯同してTの事務所を訪ねて来た。
「菊地(翔・エクシア代表)に相談したんですが『お前、お金あるんだから自分で探せよ』って言われちゃって自分で探した先生なんですよ」
関戸は自分の弁護士をこんな風に紹介した。どことなく菊地との距離感を感じさせる口ぶりだったとT弁護士は言う。
T弁護士は被害者の代理人として、“騙し取られた”金額の一部でも取り戻そうとしていた。そのために「エクシア」幹部の資産逃れを防ぐために「仮差押」の裁判を起こそうとしていた。
関戸の“財産隠し”にストップをかける
「財産の処分をしようとしているのですか? それは酷いですよ、関戸さん」
Tがこう言うと、関戸は悪びれた風もなく「僕にはもう財産はないですよ」と返した。関戸の説明はこうだ。実は妻とはすでに離婚しており、慰謝料として財産は妻に渡してしまったのでもう自分には財産は残っていない、と。差し押さえの手が届かぬようにするための“偽装離婚”と“財産隠し”ではないのか――Tはそう疑った。
関戸が処分したと主張する財産とは、渋谷区代官山の高級マンション。キャッシュで買ったという「プラウド代官山」の一室は、中古市場でも2億円を下ることはない。
「だから僕にはもう財産はありません。税金も滞納しているような状態なんです」
関戸はこう言うが、T弁護士は関戸と妻がまだ家賃数百万円といわれる別の高級マンションに同居していることも確認していた。T弁護士は、東京地裁での「仮差押」の手続きの中で、関戸が財産の処分を図っていることをすでに知っていた。
「先を越されたと思って焦った」というT弁護士は、関戸の財産の名義変更手続きを禁止する「処分停止の仮処分」を東京地裁に起こしている。売り抜けた高級マンション以外の“財産隠し”にストップかけることになる。