栃木県那須町の山間にある「殺生石」。那須岳の斜面にあるこの巨大な溶岩で、国を滅ぼそうとしたことで知られる「九尾の狐」伝説にゆかりがある。
この伝説では、インドや中国で悪行を重ねていた狐が日本に飛来し、退治されたあとも石に化け、近づく者を殺し続けたといわれている。
だが、昨年3月、『殺生石が割れた』というニュースが飛び込んできた。それだけにはとどまらず、イノシシ8頭が殺生石の周辺で死んでいたという。SNS上では「狐が復活したのでは」と話題になった。
真相を探るべく、記者は殺生石を訪ねてみることにした。
殺生石が割れたのは、ロシアがウクライナに侵攻した頃
東京都内から高速道路を走ること約2時間半。目的の殺生石にたどり着いた。この日は快晴だったが、2月初旬の那須は都内より寒く、路肩にはまだ溶け切っていない雪がかすかに残っていた。
殺生石の駐車場に車を止めようとしたがあいにくの満車で、数分ほど待ってから駐車することができた。外に出ると、マスク越しでも硫黄のにおいが鼻にツンとくる。殺生石がある那須岳のこの一帯は、火山性ガスが噴出しているという。
地元の女性に殺生石について聞いてみると、次のように話した。
「殺生石が割れたのは、ちょうどロシアがウクライナに侵攻したころでした。もともと九尾の狐伝説では、狐が美しい女性に化けて国を滅ぼそうとしたといわれているので、『狐がプーチンを操っているのでは』と話題になりました。何となくですが、落ち着かない雰囲気になりました……」
伝説では、平安末期に九尾の狐が美しい女性に化けて鳥羽上皇を殺害しようとしたが、陰陽師に見破られて退治され、石に化けたという。その石は近づく動物や人間を殺し続けたが、寺の和尚が経を唱え続けたところ三つに割れ、そのうちの一つが那須に残ったとされている。