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 割れたことにより、脚光を浴びることになった殺生石。地元の人たちにとっては、不吉どころか、「幸運が舞い込んできた」そうだ。土産物店で働く男性はこう話す。

「確かに、殺生石が割れた当初は”悪い噂”が飛び交いました。『狐が悪行を働くんじゃないか』とか『何か悪いことが起きるのではないか』と……。ですが、殺生石が割れる前は、駐車場に2、3台の車が止まっているだけでしたが、今では満車です。石が割れたことでむしろ観光客の方々が増えたので、ありがたく思っています。私たち地元の人にとっては、幸運の狐ですよ」

©文藝春秋

 確かに殺生石に続く遊歩道は、子ども連れの家族やスマートフォンで動画を撮っている外国人らしき観光客などで賑わっていた。

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「地元にとっては幸運の狐」九尾の狐伝説の“本当の姿”

 この男性によると、殺生石が注目を集めたことを好機と捉え、観光の起爆剤としていきたいようだ。今では割れた殺生石をモチーフに、様々なグッズが販売されているという。

 そもそも九尾の狐伝説は、狐が人を呪うような話ではないそうだ。伝説に詳しい男性はこう話す。

殺生石の近くには「千体地蔵」も佇んでいる ©文藝春秋

「古来、人々は九尾の狐を『瑞獣』として崇めていました。ですから、殺生石が割れたからといって不吉なことではありません。むしろ、開運が訪れる吉兆と捉えています。

 那須は別荘地や会社の保養所が立ち並んでいましたが、高齢化やコロナの影響などで前より活気がなくなってきたのは事実です。ですが、殺生石が割れたことで再び注目を浴びることになりました。私たちは『狐が石から出てきて、この町を活気づけようとしているんだ』くらいに思っているんですよ」

 割れることで幸せを招いた殺生石。九尾の狐の新たな伝説が刻まれたようだ。