転機となった「あまちゃん」出演
翌2013年には、NHKの朝ドラ『あまちゃん』でヒロインの母親(小泉今日子)の若い頃の役を演じ、ブレイクを果たす。三陸海岸沿いの小さな町から、アイドルを目指して上京するという同役は、有村いわく自分自身そのもので、これまでにないくらい感情移入でき、《「ああ、役を生きるってこういうことなんだ」って思える瞬間が何度もありました》と、のちに振り返っている(『an・an』2014年10月8日号)。
じつは、『あまちゃん』の放送が始まる直前、有村は20歳を迎えるとともに「絶対に私は今年で変わるんだ!」と決めていたという。それというのも、俳優の仕事を始めて3年ほど経ち、ある程度は慣れてきたが、その慣れが自分への甘えとなり、楽しむことができずモヤモヤした状態が続いていたからだった(『an・an』2014年12月3日号)。
同時期には、自分の甘えをいやというほど思い知らされる出来事もあった。それは、『週刊文春』の巻頭グラビア「原色美女図鑑」の初登場時、その本番の撮影前に2ヵ月にわたって写真家の大江麻貴と同居し、朝起きて夜寝るまでずっと撮影されたときだった。
このとき、大江から「女優になる覚悟がないんじゃない?」と言われ、有村は《自分の甘さや情けなさが恥ずかしくて、すごく悔しかった》という(『週刊文春』2013年2月7日号)。このままではいけないと、先述のとおり決意を固めた彼女は、『あまちゃん』のオーディションを受け、本来応募したヒロインでこそなかったものの、重要な役に選ばれたのだった。
『ひよっこ』撮影中の葛藤
朝ドラのヒロインには、その後、2017年の『ひよっこ』で起用されている。このとき、すでに多くのドラマや映画に出演し、『ひよっこ』のヒロインにも脚本家の岡田惠和の強い要望もあり、オーディションなしで決まった。だが、有村はこの期に及んでも、芝居に関して自信が持てなかった。
本人によれば《『ひよっこ』の撮影中には、NHKの西口玄関までは行くものの、そこから足が進まず、玄関前で立ち尽くしたことがよくあって……(苦笑)。そんなときは、『こんなところで自分に負けちゃダメ!』って言い聞かせながら、足をトントンたたいて、何とか乗り切りました》というから、まるでこれ自体が朝ドラの一エピソードのようだ(『週刊朝日』2018年12月7日号)。