きょう5月25日は俳優の上野樹里の36歳の誕生日だ。デビューからすでに20年あまりを数える上野だが、いまなお新境地を拓き続けている。
先月には長らく所属した芸能事務所・アミューズからの独立を発表する一方、出演するドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』(Netflix・テレビ東京共同制作)の配信、主演を務める『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS系)の放送があいついでスタートした。前者では「もし男性が妊娠したら?」という設定のもと、妊娠した主人公(斎藤工)のパートナーを、後者では母に先立たれた父(松重豊)と一緒に婚活を始める娘を演じている。いずれも、家族や男女関係の形の多様化が進むいまの時代を反映した意欲作だ。
30代に入ってからの出演作では、2019年に主演したドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系)が好評を博し、翌年には続編も放送され、上野の新たな代表作となった。彼女の演じるヒロイン・朝顔は、法医学者として事件で亡くなった人々と日々向き合い、自身も東日本大震災で母親を亡くすという過去を背負っていた。しかし、劇中ではそれとあわせて、父親や夫と幼い娘との日常風景も丁寧に描かれる。
上野自身、続編のスタートに際し、《大きな仕かけもキラキラ感もないドラマですけど(笑)、等身大の日常や感情を丁寧に紡いでいきたいです》と意気込みを示したように(※1)、ドラマといえば、伏線や小ネタなどをたっぷり盛り込んだ作品がとかくもてはやされがちな(それはそれでありとはいえ)昨今にあって、本作のようなドラマがつくられ、なおかつヒットしたのは貴重だ。
『のだめカンタービレ』で自然な演技ができたわけ
上野は中学在学中の2001年にCMでデビューしたが、彼女の存在を一躍世間に知らしめたのは、17歳のときに出演したNHKの朝ドラ『てるてる家族』(2003~04年)だろう。同作の主演は上野と同い年の石原さとみで、石原が4人姉妹の四女、上野が三女という役どころだった。この三女は姉妹のなかでもとくに個性が強く、子供のころから芸術や発明に興味を持ち、ひょんなことから即席ラーメンの開発にも携わる。
こうした天才肌の自由奔放なキャラクターは、『てるてる家族』と同時期に撮影された映画『スウィングガールズ』(2004年)などいくつかの作品を経て、人気コミックのドラマ化『のだめカンタービレ』(2006年、フジテレビ系)で演じた音大生・野田恵に集約され、上野は大ブレイクを果たす。そのあまりに自然な演技に、彼女が素で演じていると思った人も少なくないはずである。