そんなふうに壁にぶち当たっては自力で乗り越えてきた彼女を、《有村さんは、丁寧に生きようとしている方だと思いました。若いのに、一つひとつの仕事に向き合おうと努力している姿がすごいなと》と評したのは、映画『関ヶ原』(2017年)で初めて共演した岡田准一である(『週刊朝日』2017年9月1日号)。『どうする家康』では信長を演じる岡田だが、このときは石田三成の役、有村は三成に仕える忍びの役を演じた。
有村と共演した俳優はおおむね、彼女について好印象をもって語っている。昨年放送のドラマ『石子と羽男』で共演した中村倫也は、《わりと好き勝手にやっちゃう僕に対して、架純ちゃんは自由にやらせてくれながら、たまに付き合って一緒に遊んでもくれる》と、彼女の度量の広さを強調した(『an・an』2022年7月13日号)。
菅田将暉が「有村さんじゃなければ…」
また、同い年で誕生日も2月21日と近い菅田将暉は、かねてより有村とお互いにガッツリ共演したいと思っており、映画『花束みたいな恋をした』(2021年)の恋人役でその念願をかなえた。菅田は有村について《プレイヤーならではの疲労感をこの人は知っているんだろうな、と勝手に》思っており、《愚痴を言い合えたらラクだろうし、この人には言えるという感じがあって》、実際に共演してみると《有村さんじゃなければ、こんなに対等にはできなかった》と、有村との対談で明かしている(『フィガロジャポン』2021年3月号)。彼女もまた、菅田にはあらかじめ「もう菅田くんに気を遣わないので!」と断ったうえで、撮影中はしたいようにしていたという。
有村はキャリアを重ねるうち、どんな俳優と共演しても、相手の個性を引き出し、ひいては自らの存在感を示す域にまで達しつつあるようだ。強烈な個性を持つわけではないが、印象に残る役を演じ続け、見る者を引きつけてやまない。そんな普通っぽさが彼女の武器ともいえる。
「私は、顔も華やかではないし…」
それは彼女自身、以前から意識していたことでもある。『あまちゃん』で一躍注目されたあと、自分のどこがみんなに受け入れられたと思うかと訊ねられると、《うーん。普通なところ? でしょうか(笑)。私は、顔も華やかではないし、モデルさんのようにすごいオーラもないけど、親近感のようなものを感じてもらえたらうれしいです》と答えていた(『サンデー毎日』2013年11月24日号)。
近年にいたっても、ドラマ『姉ちゃんの恋人』(2020年)で主演したときには、弟役の子から「普通の人で良かった」と言われたことがあったという。これを受けて有村は《そう言ってもらえるのは、ちょっと安心しましたね。私もそういう感覚を忘れたくない人間でもあるので、そう思っていただけたほうが、自分としてはありがたいです。ちゃんと地に足つけて生きていきたいなって思うので》と語っている(『CUT』2021年2月号)。