「茶会に招待されているのは陛下が日頃勉強なさっている大学の学長さんや、スケートなどの習い事の先生といった方々です。会は陛下が入場されると始まり、最初に参加者の中から1人、代表の方がお祝いの言葉とともに乾杯の音頭をとります。代表者の“おめでとうございます”のかけ声に皆さんで唱和して乾杯。名称は茶会ですが、アルコールの用意もあるので各々好きなドリンクで乾杯します」
乾杯のあとは、そのまま歓談の時間に入ることが多いという。会場はいわゆる立食形式で、グラスを片手に好きな料理を手に取り、自由に移動しながら歓談を楽しめるようになっているという。
「食べ物はサンドイッチや焼き鳥、巻きずしなどが供されるのですが、会話をしながら食べられるようにとの気遣いからフィンガーサイズで用意されます。おそらく、宮内庁大膳課で作られたものだと思います。大膳課の料理は本当にレベルが高く、大膳課に所属されていた方に一度料理を再現していただいたことがあるのですが、2日かけてじっくり作るコンソメスープがとてもおいしかったのを覚えています」
「陛下の席の前に皆さん行列をなして……」
「天皇の料理番」と呼ばれることもある大膳課の料理人たちが腕を振るった料理が並ぶが、実は参加者のほとんどは食べることは“二の次”になってしまうという。
「乾杯が終わると、皆さんがお祝いのご挨拶をするために陛下の前に並ぶそうです。事前に侍従の方が『おひとり当たり30秒ほどでお願いします』とお願いをするのですが、陛下との親交がある方々ですから、少し延びてしまうこともしばしば。そのため、茶会が終わるまで長い行列が途絶えないんだとか」
“茶会”の時間は1時間程度であるものの、招かれた専門分野の先生たちも、いつもはお堅い話題に終始しているのだが、この日だけはリラックスして歓談され、日中の過密な諸行事を終えた陛下にとってほっと一息つける瞬間なのかもしれない。
「“茶会”は陛下が退場されるとお開きになります。参加者が会場を後にする時には出口に侍従の方々が待っていて、和菓子の和三盆糖菓子をお土産として渡してくれるそうです。皇太子時代はお印であるあずさの花がデザインされていましたが、天皇に即位された後は菊の御紋に変わっています」
お誕生会としてはとてもシンプルな内容だ。しかし実は他の皇室の方々や、天皇陛下が幼い頃には“出し物”のおもてなしがあるケースもあったという。