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「文藝春秋」報道から払い下げ?

 貧すれば鈍する、とはこのことか。

 新聞の政治記事が週刊誌のスキャンダル報道の「下請け」と化したと言われて久しい。政治家の辞任騒ぎから岸田文雄内閣の支持率低迷まで、そこかしこに足跡が残る。

 さすがに記者も悲憤慷慨して自助努力に舵を切るかと思いきや、走る方向はまさかの逆向きだ。ついに政治家の発言でさえ「元請け」から払い下げを願う身分に陥ったものらしい。

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 菅義偉前首相が1月10日発売の本誌2月号に論考を寄せて、岸田首相が「派閥とうまく付き合いながら人事を決めている」と批判した。表題にある「派閥政治と決別せよ」との論にとどまらず、権力闘争的なきな臭さを感じないわけにはいかない。

首相官邸を訪れた菅義偉前首相(左)を出迎える岸田文雄首相 ©文藝春秋

 問題は大手メディアの「追っかけ」方である。時事通信が12日に配信した記事の見出しには心底驚いた。「自民・菅氏、沈黙破り岸田首相批判 『政局にらみ始動』の臆測」とある。

「臆測」とはこれいかに。記事を読むと、菅氏が「岸田降ろし」ののろしを上げたとの見方を示す「中堅議員」に始まり、「戦闘開始だ」と期待を込めた「非主流派のベテラン」、「何か仕掛けようとしているわけではない」と冷静な「菅氏に近い閣僚経験者」まで、どこの誰とも分からぬ声が矛盾したまま垂れ流されている。正直に、菅氏の本心に迫る証言がないから「臆測」としたのだろうか。

 もっとも、時事通信だけを責めるわけにはいかない。「事実」と言えば、本誌の論考をはじめ菅氏の表の発言を孫引きするばかりで、後は、反応を集めてああでもないこうでもないと自民党内政局の行方を臆測してみせる。いっそ、朝日新聞デジタルの初報(11日)の書き方が正直で潔いかもしれない。

「今回は岸田氏の政治姿勢そのものへの疑義という異例の内容で真意に関心が集まっている」

新聞エンマ帖」全文は、「文藝春秋」2023年3月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

文藝春秋

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