スタッフが下着姿で働く職場
「当時のスタッフは渡辺とその妻、別の30代女性のC子さん、50代女性のD子さん、あとは週に1回ほど来る女性、それに私を含めて計6人でした。採用面接時はスーツ姿だった渡辺ですが、ある時から事務所の中を下着姿でうろつくようになって……」(同前)
そして常軌を逸した行動をとりはじめた渡辺被告は、A子さんたちに向かって驚くべきことを口にしはじめる。
「『うまく排泄ができなくて、いやいや恥ずかしい姿を自分たちに見せる障害者の方もいる。僕らもその気持ちを知らないといけない。だから下着姿になれ』と命令してきました。すると渡辺の妻が率先して脱ぎ、C子さんも嫌々ながらそれに倣うんです。D子さんだけは『絶対に無理』と断固拒否していましたが、もし断って辞めさせられたら行き場所がない、と私は思ってしまって、しかたなく職場では下着姿で過ごすようになってしまいました」(同前)
職場で下着姿になるだけでも正気の沙汰ではないが、渡辺被告の行動と“業務命令”はエスカレートしていったという。
「少し仕事に失敗したり、渡辺の気に入らないことがあると、C子さんは下着のまま、ベランダに出されるなんて罰のようなこともありました。職場の中の異常な環境に慣れ過ぎたのか、いつからか渡辺は上半身Tシャツ、下半身は下着のパンツ姿でコンビニやスーパーマーケットに買い物に行くようになりました。近隣からの通報で複数回、警察沙汰になりました。さすがに懲りたのか下着姿になる命令はなくなり、しばらくは何事もなかったのですが……」(同前)
警察の介入は渡辺被告の奇行に歯止めをかけたように思えた。A子さんの安堵とは裏腹に、渡辺被告のため込んだ狂気が一気に爆発した。A子さんが重い口を開く。
「仕事がなくなる」「下着や裸の写真をばらまかれる」という不安
「2021年7月ごろだったと思います。お風呂に行こうと誘われ、スーパー銭湯にでも行くのかなと思いきや、連れていかれた先はラブホテルでした。常日頃から『介護業界では女性の職員は社長の愛人になるのが普通』などと言っていました。おかしいとは思いました。でも、ここでクビを切られると働く当てがないのと、担当していた利用者さんも増えていて、皆さんを見捨てられないという考えになって、渡辺の言うことに従ってホテルに入り性交してしまった。そして月に1、2回くらいそういったことをさせられる関係になってしまいました」
夫のBさんは怒りをあらわにする。
「2021年冬、渡辺が『A子と沖縄に研修で2人で行く、ホテルが混んでいて同じ部屋になるけど大丈夫か』と連絡してきたんです。もちろん止めさせましたが、このとき渡辺に決定的に不信感を持ちました。いきなりこんな常識外れの連絡をしてくるのはおかしいと思い、妻と渡辺のことを調べ始めたら案の定です。妻の言った『そういう関係』になっていることが分かったのが昨年、2022年8月ごろでした。
A子に詰め寄ると、素直に告白しました。このときは単なる不倫かなと思っていたんですが、A子は渡辺によってマインドコントロールのような状態下にあったんです。『仕事がなくなる』と渡辺に嫌われることにおびえ、私に相談したり関係がバレたりしたら『下着姿や裸の写真をばらまかれる』と不安になっていたんです」
Bさんの話をうつむきながら聞いていたA子さんが口を開く。