「女性には興味ない」
準強制わいせつの罪などに問われている渡辺和美被告(55)は、自身が代表理事をつとめる障害者支援団体で働く女性従業員の警戒心を解くためにこう囁いて犯行に及んだ。体は男、心は女――自らが性同一性障害であると主張し無罪を訴える渡辺被告だが、捜査当局はこれを虚偽と見て、逮捕、起訴に踏み切った。
「他のスタッフや利用していた障害者からも渡辺被告による性被害を訴える声があがっており、警察は余罪もあるものと見て慎重に捜査しています」(全国紙社会部記者)
わいせつという犯行もさることながら、LGBTへの理解が進む世の流れに水を差すような性同一性障害にかこつけた卑劣な振る舞いには怒りの声があがっている。
今回、重い口を開いたのは渡辺被告の営む支援室で働いていた元スタッフで、30代女性のA子さん。実際に渡辺被告から性被害を受けた一人だ。A子さんの夫で、彼自身も被告を知るBさんとともに文春オンラインの取材に応じ、驚くべき被害の内容を語った。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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社会復帰を目指し、渡辺容疑者の元で働き始めたA子さん
大阪府内の自宅で取材に応じたA子さん夫妻。3人の娘がおり、一番下の子は昨年9月に生まれたばかり。室内で犬、猫、ウサギを飼っており動物が好きなことがうかがえる。子供のこと、動物のことについて話す夫妻の表情は柔らかい。だが、話題が事件のこととなると、2人ともにわかに表情が硬くなる。渡辺被告との出会いはこうだった。
「もともとA子には双極性障害があり家にこもりがちでした。ある相談支援の方にお世話になりながら社会復帰を目指していたのですが、あいにくその方が廃業することになり、引き継ぎとして紹介されたのが渡辺でした。それが2019年の冬です。初めて会った渡辺は、ぼさぼさの髪にTシャツ姿のツンとしたニオイのする汚いおじさんという風貌でした。
会うなり『自分はLGBTで、心が女性の時と男性の時がある』と言うんです。たしかに、渡辺はその日はスカートを穿いてました。勝手なイメージかも知れませんが、LGBTの方って化粧をしたりして綺麗にしている人が多いですよね。だから渡辺の見た目に不信感はありましたが、A子のことを他に頼れる人もいないため、彼を頼ることになりました」(Bさん)
渡辺被告は福祉サービスの提案や生活支援の相談に乗る相談支援専門員として、福祉業務を営む会社を経営していた。
「『うちで働こう』と誘ってくれた渡辺の元で働き始めたのは2020年6月でした。私が入ってすぐに、ある20代後半の女性利用者が『渡辺が訪問してきた時に、下着をおろされて下半身を触られた』と訴える事件が起こりました。利用者には妄想がある場合も多く、渡辺は『向こうから触るように言われた』と強弁するので、そこまで大事にはなりませんでした。でも正直、ちょっとおかしなところに入っちゃったなって思いました」(A子さん)
その危惧はやがて現実のものになる。