本の中にも、結婚前後のロイヤルファミリーの関係の変化を示す最たるエピソードが出てきます。通称“リップグロス事件”。2018年、王子が結婚する直前のことでした。
キャサリン妃が思わず顔をしかめたワケ
「ファブ・フォー(素敵な4人組)」と呼ばれ、大人気だったウィリアム王子(当時)&キャサリン妃、ヘンリー王子&メーガンの4人。その4人で登壇するフォーラムの際、メーガンがリップグロスを忘れてしまい、キャサリン妃に貸してほしいと頼んだというのです。
「ケイト(キャサリン妃の愛称、編集部註。以下同)は困惑し、ハンドバッグからしぶしぶ小さなチューブを取り出した。メグ(メーガン妃の愛称)はそれを指に少し絞り出し、唇に塗った。ケイトは顔をしかめていた」
女性の感覚として、唇につけるリップグロスの貸し借りは躊躇するのが普通ではないでしょうか。にもかかわらず、化粧品を忘れた婚約者ではなく、快く貸してくれなかった義理の姉が悪いとでもいうようです。
結婚前にはケンジントン宮殿のウィリアム王子一家のアパートをしょっちゅう訪れ、キャサリン妃お手製の晩御飯を食べていたヘンリー王子。兄弟はもちろん、キャサリンとヘンリーも大変仲がよく、「僕の理想のお姉さんができて嬉しい」と公言するほどでした。国中から愛された「国民の弟」はどこに行ってしまったのか。“リップグロス事件”の暴露に、多くの読者が驚かされました。
兄との間に起きた“暴力事件”も描かれています。メーガン妃との結婚翌年の2019年、ウィリアム王子は弟と2人きりで話し合いの場を持ちたいと言い、ヘンリー王子が当時住んでいたケンジントン宮殿のノッティンガムコテージにやってきます。そこでウィリアム王子はまくし立てたというのです。
「『メグは気難しい』と兄は言った。
『彼女は無礼で人をいらつかせるし、職員たちにも不愛想だ』
兄がマスコミの言葉をそのままなぞるのはこれが初めてではなかった」
ヒートアップした2人は口論に発展。ウィリアム王子は弟に掴みかかってきたというのです。
「兄は(手に持っていた)水の入ったグラスを置いて僕の別の名前を呼び、近づいてきた。すべてが一瞬だった。彼は僕の襟を掴み、床に押し倒したのだ。ネックレスは引きちぎられた。僕は犬の餌皿の上に倒れ込み、破片が体に刺さった」
ウィリアム王子に「昔の喧嘩みたいに僕を殴れよ!」と言われたヘンリー王子ですが、じっと横たわったまま一切やり返さなかったことを強調しています。
単なる兄弟げんかを大げさに記しているのではないか。ウィリアム王子を貶めたかっただけではないか。英国内ではそう言われていますが、宜(むべ)なるかな。すでにテレビ番組ではコメディアンによってパロディにされ、おちょくられています。「次は首飾りでしょう?」「そうそう、ちょうどそこに犬の餌皿があったはず」——。シニカルなユーモアを好むイギリス人らしいのですが、「あの温厚で子煩悩なウィリアムが?」と懐疑的な向きが多いようです。
2005年に世界中から大ブーイングを受けた“あの事件”についても、王子は弁解しています。