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「ケイトが笑うのを見るのが好きだった」

 仮装パーティに、ハーケンクロイツが描かれた腕章を巻き、ナチスの制服姿で参加する様子をマスコミに撮られてしまったヘンリー王子ですが、この衣装選びに、ウィリアム王子とキャサリン妃が深く関わっていたというのです。

 パイロットの制服とナチスの制服で迷っていた王子は2人に電話をかけます。「ナチスの制服がいいよ」と言われた王子。さっそくそれを着て2人のもとを訪れたときの様子をこう記しています。

「2人は大笑いした。『ウィリー(ウィリアム王子の愛称)のレオタードよりひどいね! もっとばかみたい!』」

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「僕はケイトが笑うのを見るのが好きだった。彼女を笑わせるのが僕であればもっとよかった」

キャサリン妃 ©時事通信社

 当時、王子は20歳の立派な大人でしたから、2人に責任転嫁することはできないはずですが……。

 本書の内容や発売前後に王子が答えたインタビューについて、今のところ、王室側は反論はおろか一切の言及もしていません。

 一方のヘンリー王子は、さらなる暴露の余地があることを暗に示しました。出版後の1月13日に公開された英「テレグラフ」紙のインタビューで、王子はこの本が草稿段階では倍の800ページあったことを明かし、妻への謝罪を要求したのです。

「特に僕と兄、僕と父との間で起こったことでどうしても世間に知られたくないことがある。それを書けば、彼らは決して許してくれないだろう」

「きちんと膝を交えて話し合いたい。僕が本当に求めているのは説明してもらうことだし、妻にも謝罪してほしい」

 まるで暴露をネタに脅迫しているようにも見えます。王子は、王室メンバーたちが挑発に乗ってこないことに苛立ちを感じているのだと思います。刺激的なことを次々に表沙汰にすることで、何とかして王室から怒りや反論の言葉を引き出したい。

 しかし、ウィリアム皇太子夫妻は粛々と公務をこなしています。本書発売直後の1月12日には、夫妻でリバプールの病院を訪問し、患者やスタッフを激励。18日にはキャサリン皇太子妃が単独で保育園を訪れ、子供たちと触れ合い、職員と議論を交わしました。現地では「dignified silence(威厳ある沈黙)」と言われています。

ジャーナリストの多賀幹子氏による「ヘンリー王子“暴露本”の読みどころ」は、「文藝春秋」2023年3月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。「文藝春秋 電子版」では、多賀氏が同書を解説したオンライン番組もご覧いただけます。

文藝春秋

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ヘンリー王子“暴露本”の読みどころ