「竹内さんはこぢんまりと設計会社を経営していました。挨拶をすると気さくに返してくれて、“気のいいおっちゃん”という感じでしたね。身なりも普通で、高齢にしては元気で今も現役。特別、金に困っているようには見えませんでした。ビットコインを運用しているというのも聞いたことがなかったですし、ご高齢ということもあってイメージがつながらないというのが正直なところです。警察から事件当日の様子を聞かれましたが、テレビをずっと見ていたし、暴行の音は全く聞こえてこなくって……」
そんな“気のいいおっちゃん”が巻き込まれたのは、凄惨な集団リンチだった。
公判で女が語った内容によれば、事件当日、男女7人は広島市内の百貨店内のレストランに竹内さんを呼び出し、「運用の内容を見せてくれ」と迫った。それに対して、竹内さんは「見せません」「取引がゴールデンウイークに殺到し、出金制限で(支払いが)遅れているだけ」と追及をかわそうとしたのだという。この時、レストランの店内では「この詐欺師が!」と今泉容疑者らが叫ぶ姿も確認されていたようだ。結局、今泉容疑者と伊藤容疑者が竹内さんを囲み、事務所まで車で移動。そこから計16時間に及ぶリンチが始まる。
「竹内さんは顔などを殴られ、『だますつもりだった』『口座残高はなく返金できない』と“詐欺”を認めたようですが、暴行は止まりませんでした。この長時間リンチの時点で、竹内さんは死亡していたとみられます。その後、今泉容疑者らは竹内さんを毛布にくるんで、倉本容疑者の車に乗せて、埼玉県内まで運び遺体を遺棄したようです」(前出・社会部記者)
被害者だったはずの普通の母親が凶悪事件の犯罪者に…
まさに極悪非道な犯行だが、逮捕された女らは回収屋について、「被害にあった人の味方をして、話し合いで詐欺師からお金を取り返してくれると思った」と話すなど、ここまで壮絶なリンチを想定していなかったようだ。
遺体の運搬に車を提供した倉本容疑者は、近隣では「優しそうなお母さん」と認識されていたという。近隣住民の女性が話す。
「倉本さんは父母ときょうだい、小学生の娘の5人で暮らしていました。倉本さんは一度結婚して実家を出たけど、離婚して娘と出戻りしたようです。髪は少し明るめで、昔は夜に仕事へ出かけていく姿も見ましたが、最近は昼勤めだったようです。よく娘を家の前で友達と遊ばせていたり、一家で犬の散歩に出かけたりと家庭は円満そうに見えました。お父さんは京大卒で中国電力に勤めていた立派な方でしたし、お金に困るような家庭じゃないでしょう。だから強盗致死と聞き『なんでそんなことに?』という思いが拭えません。近所では『巻き込まれてしまっただけで、倉本さんは悪くない』なんて言われ方もされています」
取材班は、倉本容疑者の母に、事件の経緯を尋ねたが、「お答えすることはありません」と気まずそうに答えるのみだった。
詐欺被害者だったはずの普通の母親が、一転して凶悪事件の犯罪者として裁かれる。こうした悲劇が繰り返されないように、SNSで知り合った回収屋に安易に接することは控えるべきだろう。
今泉容疑者は「手は出したがなぜ強盗になるかわからない」と供述。他の6人も否認や黙秘を続けているという。
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