ヤクルトでも守護神として活躍。あの名クローザーの今
数々のドラマを生んできた野球世界一決定戦WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の中でも、特に日本人の記憶に残るのは2009年の第2回大会の決勝戦ではないだろうか。延長10回までもつれた日韓対決でイチローが決めた決勝タイムリーは、今もテレビでよく流れるWBC名場面であるが、気になるのは「イチローに打たれた男」のその後だろう。
林昌勇(イム・チャンヨン)。サイドスローながら球速160キロを出す剛腕で、韓国の野球ファンたちから「昌勇不敗」と呼ばれていて絶対的守護神。当時所属した東京ヤクルトスワローズでも1年目から30セーブ以上を記録し、2009年からは3年連続でオールスターにも選出されたほどだ。韓国では、曖昧な敬遠サインを送ったベンチを無視してイチローと勝負し打たれたことから一時は「戦犯扱い」もされたが、日本では知名度が急上昇。イチローと真っ向勝負したことで男を上げた人物でもある。
あれから14年。林昌勇はその後どうしているのだろうか。
「とっくに引退していますよ。2012年にヤクルト退団後、シカゴ・カブスとマイナー契約してメジャーリーグに挑戦しましたが、2014年に韓国球界に戻って今から4年前の2019年3月に韓国でユニホームを脱ぎました」
そう教えてくれたのは韓国一般紙で野球担当を務めるA記者だ。日本時代はもちろん、アメリカ挑戦も追いかけて林昌勇を取材したという彼はちょっぴり寂しそうにこんなことも言っていた。
「林昌勇は間違いなく韓国球史に残るピッチャーのひとりです。“人生で重要なのは、スピードではなく方向だ”という彼の言葉は名言として記憶されています。ただ、その功績の割には引退式も記者会見もない、プレスリリースを通じての引退発表でしたし、最近はその姿を表舞台で見かけることもない。40レジェンドに選ばれても、彼だけは授賞式すら行われていません」