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それでも『友だち5000人芸人』の肩書を手放すことができなかった。ブランド品と同様、何もない僕を守ってくれる鎧だったから。
それを脱ぐのは怖すぎた。僕なんかが丸腰で生き残れる世界じゃなかった。
改めて、思う。
闇営業の騒動が起こらず、今も吉本興業にいて芸人を続けられていたとしたら、どうだったろう。僕は、今よりも幸せだったんだろうか?
騒動の前から、僕はとっくに破綻していた。周りの人にはそれがはっきりとわかっていた。僕自身も気づかないふりをしていただけだった。
後輩たちに当たる日々
それでも、僕は人に会い続けた。
会えない日はイライラした。一人ではいられないから、後輩たちを誘って飲むが、時間を無駄にしているような気がして、焦りばかりが募った。
「お前ら、何かいい情報持って来いよ!」と、後輩たちに当たった。
ネタを探して、人と会った。声をかけられれば、どういう方なのかもよくわからないまま、会いに行き、一緒に写真を撮った。あちこちで、僕との写真がSNSに上がった。
それを見た方から「入江さん、〇〇さんとも友達なんですね。僕もなんですよ」と言われても、僕は正直、どこの〇〇さんなのかさえわからなかった。顔すら思い浮かばなかった。
正気の沙汰ではなかったと思う。