2019年6月の「闇営業」報道によって、社会的信用を一気に失ったカラテカの入江慎也氏。あまりのショックから一時期は、体も頭も働かない氏だったが、“ある人物”との出会いをきっかけに事態は好転する。
芸能界を引退した彼が、「お掃除のプロ」として再起できたワケとは? 痛恨の自省録『信用』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
◆◆◆
地に足をつける
僕はまた部屋に閉じこもるようになっていた。カーテンの隙間から差し込む8月の光はやけにまぶしく、気持ちがさらに落ち込んだ。
「そろそろ前を向かないと……」と思うのだが、頭も体も動かなかった。
ありがたいことに、僕を気遣ってくださり、新しい仕事に誘ってくださる方もいた。
たしかに、このままこうしていても何も変わらない。失ってしまった社会的信用も、世間の僕を見る目も変わらない。
でも、いったい何から始めたらいいんだろう。
矢部からは「地に足をつけて、できることから頑張っていったらいいと思う」と、言われていた。地に足をつける。これまでの僕は地に足がついていなかったんだろうか。
「入江、大丈夫か? お前、最近フワフワしてるぞ」
放送作家の鈴木おさむさんの言葉がよみがえってきた。僕が人脈を武器に仕事をし出した頃から、そんなふうにたびたび注意されていた。
今田耕司さんもそうだった。
僕が社長さんたちとのお付き合いの中で、派手なブランドものの服を着始めたとき、僕の変化を素早く感じ取り、「もう少し自分の見られ方を考えたほうがいい」と忠告してくださった。
「お前が後輩を社長さんとの食事会に誘うのは後輩のためやない。お前が社長さんの前でええカッコしたいだけや」とも言われていた。
僕は「そんなことありません。皆、喜んでくれてます」と即座に否定したが、今思えばその言葉の通りだった。
今田さんはずっと「入江は脇が甘い。注意せなアカン」と言い続けてくださっていたのに、僕はずっとその言葉を無視し続けた。