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木の彫り跡がはっきり見えてくるような仕上げなのに、かくもリアルなのか? 彫刻家・はしもとみおの動物コレクション

木の彫り跡がはっきり見えてくるような仕上げなのに、かくもリアルなのか? 彫刻家・はしもとみおの動物コレクション

2023/02/21
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純金の輝く動物コレクションも

 兵庫県出身のはしもとみおは、小さいころから無類の動物好きだった。獣医を目指していたところ、15歳のときに阪神・淡路大震災に遭う。大きな被害が出るなか、自分は何もできないという無力感を味わい、失われてしまった命は人にせよ動物にしろ、決して戻らないことも痛感した。

 ならばせめて、やがては失われる生命のカタチを、自分の手で留め残したい。そんな気持ちが湧き上がり、進路を美術へと変更した。美大に進学してから彫刻を本格的に始め、以来ずっと動物の姿を彫り続けてきた。

「私が目指しているのは、難しい理屈は抜きにだれにでも理解してもらえて、直接的に何かが伝わる美術。だから今展の作品は、手でさわって楽しんでいただけるようにもなっています。ぜひ実際に感触をたしかめてみてください」

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 ときに、会場に並ぶさまざまな動物たちのなかに、どこか見覚えのある顔が見受けられた。「ブサかわ」な秋田犬として人気を呼び、写真集や映画にもなった「わさお」だ。

 

 わさおの死後、彫像をつくってほしいとの依頼が、はしもとのもとへ舞い込んだ。すでにいない存在を、残された写真や人の話から再現する「復元彫刻」は、日ごろ手がけている「肖像彫刻」よりもずっと難しそうだったが、自身の持つ技術と感性をフル動員して完成へと漕ぎつけた。

 サイズが大きいことも相まって、わさおの彫像は会場内でもひときわ目を惹くものとなっている。

さらに目を惹く強い輝きとオーラを放つ作品群

 目を惹くといえば、小さいながら強い輝きとオーラを放つ作品群がもうひとつ。純金製の小さい動物たちが、はしもとみおのアトリエを模したミニチュアのなかに配されている。今展の会場になっている貴金属店「ギンザタナカ」と、はしもとみおが共同制作した「純金オブジェコレクション」。

 子犬、子猫、トラ、ネズミ……。はしもとの手による原型をもとにつくられているだけに、どれもさすがの愛らしさだ。

 

 銀座のど真ん中にある会場で繰り広げられる「生命賛歌」に、ひとときどっぷり浸ってみたい。

INFORMATION

はしもとみお 木彫展 -時をかけるケモノたち-
2月3日~3月19日
ギンザタナカ 銀座本店5階ホール 東京都中央区銀座1-7-7

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