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第二次世界大戦、アルジェリア戦争… ロンドンを拠点にする女性写真家が写す“争い絶えぬ世の中”

アート・ジャーナル

2022/06/28

 リアルタイムで「戦争」の映像を、日々突きつけられる現在である。

 刻々と変わる情報は注視しつつ、多面的に状況を考えてみたい向きは、こちらの展示を一見されたい。

 東京六本木、シュウゴアーツで開催中の米田知子個展「残響ー打ち寄せる波」。

米田知子個展「残響—打ち寄せる波」会場風景 Photo by Shigeo Muto

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記憶と歴史を写真に収める

 ロンドンを拠点に活動する米田知子は、写真表現をベースに創作するアーティスト。1990年代から作品を発表し続けてきた彼女の作品には、すべて一貫したテーマがある。人の記憶と歴史、だ。

 創作の起点は、主に20世紀に起きた歴史的事象である。たとえば、1930年代の「スペイン内戦」。第二次世界大戦の転機となった「ノルマンディ上陸作戦」や「ヒロシマ」。アルジェリア戦争に際して独自の発信を続けた文学者「カミュ」だったりもする。米田はこの時点ではジャーナリスティックな手法に徹し、綿密なリサーチと取材を重ねる。

米田知子 Tomoko YONEDA 70年目の8月6日・広島 The 70th 6 August, Hiroshima 2015  ©️Tomoko Yoneda Courtesy by ShugoArts

 そうして自身の「関心の核」を見つけると、いよいよカメラを持ち出して、歴史的事象の記憶を宿す場所や人、モノを被写体に定め、撮影を敢行して写真表現をつくり上げていく。

 完成した作品の画面としては、静謐な光景が精緻に写し取られていて端的に美しく、いつまでも眺めていられる。同時にその1枚の写真とささやかな長さのキャプションの中には、20世紀の歴史の一端がぎゅっと凝縮し封じ込められている。

米田知子個展「残響—打ち寄せる波」会場風景 Photo by Shigeo Muto

美しい画面に惹きつけられ、うっとり眺めているうちに

 観る側からすれば、美しい画面に惹きつけられてうっとり眺めているうちにふと、その内側に潜む何か大きなものに気づいて驚いてしまう。歴史とは意外なほど身近で、自分の生きている時間や空間と地続きだったのだと知らしめられるのだ。

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