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 実際に、自分も騙されたことがあります。ある高齢男性が生活保護の相談に来たのですが、記憶喪失とホームレスを装っていたのです。このため、本籍地や現住地を確認できないまま保護を開始してしまったのですが、実は別な地域で生活保護を受給していたことが、後日判明したのです。

 このようなことがあるため、生活保護の相談では、様々なことを聞き出さなければなりません。もちろん、取り調べではないので詰問するようなことはないのですが、それでも、曖昧な内容については詳細を確認しなければならないのです。こうした時に求められるのは、緻密さです。相談者の就労、資産、扶養、家族状況など、様々な点について事実を正確に把握する緻密さが求められるわけです。

 たとえ1つでも確認漏れがあると、後日、生活保護費を返還してもらわなければいけないなど、相談者に迷惑をかけてしまうこともありますので、慎重に1つ1つについて確認しなければいけないのです。

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 ちなみに、この生活保護の相談者には、元暴力団員という人もいました。この時は、一見してそうだとわかる様子でしたし、事前に警察から連絡があったこともあり、とても緊張したことを、今でも覚えています。

慎重な発言が求められる「障害者とのコミュニケーション」

 また、ハンディキャップのある方とのコミュニケーションも、公務員にとっては必須です。特に、障害者福祉課などの部署では、多くの障害者に会うことになります。障害には身体、知的、精神など様々なタイプがありますので、職員としてはそのことを認識しておく必要があります。

 差別的な発言がNGなのは当然のことですが、相手との距離を詰めようと軽口を言ったつもりが、実は相手の心にダメージを与えてしまうようなこともあります。このため、発言にもより慎重さが求められるのです。

 これまでにそうした方々と接した経験がない、新人職員の中には、時に奇声を発するような精神障害者の対応に苦慮する姿も見られます。しかし、新人職員とは言え、これも住民サービスの1つであり、公務員にとっても1つの仕事ですから、慣れていくほかないのです。