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「ママ、ととして」

 ととして、とは、とんとんして、ということだ。わたしは、娘が生まれてからずっと眠る時は、ねんねんころりよを歌いながら、とんとんしてきた。3歳になり、ようやく朝まで寝てくれるようになったが、それまでは3時間おきに娘は起きた。そのたびに、とんとんしながらおっぱいをあげた。2、3年、3時間しか続けて眠ったことがないのだから、そりゃ疲れる。

 ようやく娘が眠った。寝顔を見て、 

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「可愛い」

 と、呟いた。寝てくれると、本当に、可愛い。お願いだから、よく寝てほしい。 

子どもと生活することがここまで大変だったとは

 娘が眠ると、隣でスマホを開き、何も考えず、LINEツムツムをやり始めた。一度課金したら、毎日のように課金するようになった。数万円は、課金しているに違いない。ある時、 LINEのパーティーなるものに行き、ずいぶん課金させていただいたから手当たり次第食べてやる! と意気込んで誰とも話さず美味しい料理を食べ続けた。おかげで、帰り道食べすぎで気持ち悪くなって吐いた。 

 そのうち、バカバカしくなって課金をやめた。

 この時期、わたしは疲労から何度か倒れた。入院して点滴をしながら数日仕事に通った。

 疲れていた。

 子どもと暮らしながら生活することが、ここまで大変だったとは。

 誰も教えてくれなかったもんなあ。

 子どもは宝で、可愛いという情報しか入ってこなかったもんなあ。

 ここにきて、責任を持って子どもを育てられないなら産むなと言われても、親になってみないとわからないよ。

 離婚したのは自業自得? そうだが、そうなのだが、ワンオペがここまで大変なことだとは。今気づいたから、ヘルプミーと言うのは無責任なの?

 倒れて、死んで、初めて、なら助けを求めればよかったのに、と言うんだろう、そうだろう? 世間って、そうだろう。

青木さやかさん(撮影=後藤利江)

「自分で選んだことなので、後悔しないように」 という母の返信

 母にはメールで離婚を伝えた。こう返信があった。

「自分で選んだことなので、後悔しないようにしてください」 

 わたしは、声をあげて泣いた。

 あなただけは、

 大丈夫なにがあっても大丈夫 

 と言ってくれる相手じゃないのか。 

 親って、そうじゃないのか。

 わたしは、だから、ひとりぼっちなんだ、だから、こんなオトナになったんだ、と、母を恨んだ。
#2に続く)