2019年に日本で行われたラグビーワールドカップの大成功を記憶している人は多いだろう。同じ“フットボール”を名乗っているとはいえ、サッカーの陰に隠れがちだったラグビーに脚光があたり、にわかに日本中でラグビーブームが起きたのにはラグビー関係者もずいぶん驚いたそうだ。
屈強な体をした連中が楕円球を追ってぶつかり合うあの球技を、なぜラグビーと呼ぶのかは有名な話だ。19世紀のイギリスで行われた、とあるフットボールの試合。出場選手のひとりがいきなりボールを抱えて相手ゴールを目指し突進しはじめた。型破りな行動にでたその選手は国内屈指の名門「ラグビー校」の生徒だった。競技の起源にまつわるこの“伝説”ゆえにラグビーは母国で愛されてきた。
だからこそ、日本はおろかアジアでの開催自体が初めてだったこのワールドカップには、ヘンリー王子、エリザベス女王の娘のアン王女など多数の英国王室関係者が来日した。「ラグビー」という単語の持つ力は、イギリスにとってかくも大きい。
列島を駆け巡ったラグビー校日本校設立のニュース
そんな「ラグビー」という言葉の持つ魔力が日本に根付くかもしれない。ラグビー校が日本校を設立する――そのニュースは、奇しくも日本代表の活躍が華々しく取り上げられた時期に列島を駆け巡った。そもそも1567年に創設されたラグビー校は、「イートン」「ハロー」などと並ぶイギリス国内最高峰のエリート校で、一般に“ザ・ナイン(9)”と呼ばれる9つの有名パブリック・スクールのひとつだ。複数の英国の首相を始め、世界各国の指導者たちを数多輩出してきた“ザ・ナイン”は、英国のみならず世界的に名が知れ渡っている。
と、書いてはみたものの、日本人にとって英国のパブリック・スクールは余りに遠い世界の物語というのが現実だろう。せいぜいが映画「ハリー・ポッター」が描くあの世界を思い浮かべることができる程度ではないだろうか。
しかし、これからの子供たちにはそういった世界のエリート層と同じ教育を受けるチャンスが広がっている。英国のパブリック・スクールに代表されるようなインターナショナルスクールが日本にも増え始めているからだ。
象徴的なのは、2014年に軽井沢に開校した「UWC ISAK JAPAN」だろう。本校の売りはなんといっても国際バカロレア(International Baccalaureate:以下IB)プログラムの提供。IBプログラムとは、端的に言えば国際的に認められた大学入学資格のことだ。この学校の課程を晴れて修了すれば、もっぱら国内の大学受験のみに通用する高校卒業や高卒認定試験とは異なり、外国の大学という進路が拓けることになる。開学時には世界15カ国から生徒が集まったという「UWC ISAK JAPAN」は、教育に関心のある親たちをはじめ、大きな注目を集めた。