平成から令和への「代替わり」時、学生に天皇と聞くと何を思い浮かべるのか尋ねると、多くが被災地訪問を含めた人々との交流を挙げた。平成の天皇は「象徴」のあり方として、人々に寄り添うことを重視してきた。それがメディアを通じて私たちに伝えられ、象徴天皇と言えば各地に足を運び、人々と交流をする存在だとイメージされるようになった。

 令和の天皇もそれを引き継いだが、新型コロナの流行がそれを阻むこととなった。天皇や皇后が各地を訪問すれば、自身が感染する可能性もある。訪問時に人が密集すれば、感染拡大を招く可能性もある。つまり、物理的に人々と接触をする、いわゆる「平成流」のあり方は、新型コロナと相性が悪い。そのため、天皇の模索が始まっていった。

2022年10月23日、第37回国民文化祭と第22回全国障害者芸術・文化祭(美ら島おきなわ文化祭2022)の開会式に出席された天皇皇后両陛下 ©時事通信社

コロナ禍のなかで、模索する皇室

 まずは、積極的に専門家から話を聞くことから始めた。従来、こうした「ご進講」の様子が公開されることはほとんどなかった。ただし今回は違った。天皇と皇后が、マスクをしながら御所で専門家から話を聞く姿が写真とともに報じられ、感染拡大で苦しむ人々や医療従事者を心配する「おことば」とその様子が公表された。こうして、外出できなくても人々に寄り添う天皇像が印象づけられた。

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 また、「オンライン行幸啓」なるものも生み出された。行幸啓とは天皇と皇后が外出することである。それをオンラインでというのはやや不思議な概念であるが、逆にオンラインゆえ、1日で東西南北様々な地域の人々と会い、通常では訪問が難しい離島や中山間地域などの人々と比較的容易に対話できるというメリットも生まれた。また、全国植樹祭などの儀式にもオンラインで御所から出席し、各地の人々と交流する方策が展開された。

 天皇は様々な儀式での「おことば」で新型コロナの問題に言及することも多くなり、新年の一般参賀の代替として、天皇と皇后が2人そろって画面に登場するビデオメッセージも発表された。

 このように、2020年以降、コロナ禍のなかで、皇室も模索をしている。

 とはいえ、様々な問題が生じていることも事実である。天皇と皇后は、感染拡大状況を見極めながら、行事に出席するために次第に外出を再開するようになった。ただし都内に限定されており、宮内庁では各地で開催される行事出席をどう判断するか、検討がなされ始めていた。