広島周辺にはバイクや車で暴走行為を繰り返す若者グループが複数存在して度々警察とも揉め事を起こしているが、Aたちもそのグループの下部組織を名乗っていたという。
「広島を拠点にした暴走グループがあるのですが、Aたちはその傘下であることを周囲に自慢していました。『上の指示は絶対!』というヤンキー特有の文化でしたね」(同前)
そんな危険なグループが、なぜ会社員男性をターゲットに定めたのだろうか。
「被害にあった男性と主犯格のAはもともと同級生で、Aは飛び降り事件の少し前から男性につきまとっていて、暴行を加えたりバイクを奪ったりもしています。ただ他のメンバーは被害にあった男性とその日が初対面という人もいたようで、Aの指示で動いていた人が多いんじゃないでしょうか」(同前)
“上の指示は絶対"というヤンキーグループのルールの中で、主犯格のAの指示に従って他の少年たちも苛烈な暴行に加わっていった。
「Aが会社員男性を攻撃するようになったのは『“タブー”を犯した』というのが理由だったようです。加えて、他の仲間の前で激しく暴行することで恐怖心を植え付けて、自分に逆らわないようにしていたのだと思います。当日会社員の男性をイオンモールに呼び出した高校生も『ベロを切るぞ』とハサミで脅迫されたり川に突き落とされたりしていて、自分の意志に反してAに協力していたのかもしれません」
Aのタブーは「名前を使われた」ことか
その高校生は逮捕時に「逆らえば何をされるか分からず、怖くて逆らえなかった」と供述している。
主犯格のAは逮捕当時「関係ない」と容疑を否認し続けていた。しかし2月27日、広島地裁での初公判では一転して容疑を認め、「とてもむごいことをしてしまった。本当に申し訳なく思っている」と供述している。Aは19歳で現在の少年法では「特定少年」にあたり、広島地検は実名公表も可能だったが、「諸般の事情を総合的に考慮した」として氏名は公表していない。
公判の中では、Aが事件を起こす動機となった「タブー」の内容も明らかになった。「被害者男性が知人との揉め事で自分(A)の名前を使ったと思い、腹を立てていた」と検察側は指摘。
起きた事件の凶悪さに比較して、あまりにも矮小に見える“タブー”。仁義なき戦いは映画の中だけで十分である。