「火星の軌道へ向けて、テスラ・ロードスターを打ち上げる」。

 2017年12月、アメリカの実業家イーロン・マスクはツイッターでこう宣言した。

 彼は現在、ロケットや宇宙船を開発する「スペースX」や、電気自動車を開発する「テスラ」など、いくつかの技術系企業を率いている注目の人物。来たる新型ロケット初の打ち上げで、彼の愛車も一緒に飛ばすと豪語するのだ。

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イーロン・マスク ©getty

愛車は「重りの代わり」

 いったいなぜ、そんなことをするのか。

 そもそも、初のロケット打ち上げは失敗のリスクが高い。そのため、いきなり高価な人工衛星を載せるのではなく、失敗しても惜しくないような、ただの重りを載せるのが一般的。

 しかし彼は、インスタで「ただの重りを載せるなんて、そんなの退屈で耐えられない」と言い放つ。そして愛車・ロードスターの写真と共に「そこで、ちょっと風変わりなもの――車を載せることにしたんだ」と書き込んだ。

マスクがインスタに載せた「火星に行くテスラ」

「なぜ車なのか?」とツイッターで問われた彼は、こうも語っている。

「1台の車が、宇宙を果てしなく漂い、もしかしたら何百万年後に宇宙人によって発見されるかもしれないなんて、考えるだけでうっとりするね」。

 もちろん彼には実業家としての打算もあるだろう。世間を騒がせることで、テスラの電気自動車も、スペースXの注目度も上がるわけなのだから。

 準備が順調に進めば、テスラ・ロードスターは今年2月6日以降に宇宙へ飛び立つことになっている。