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マスクのような人物は、日本で活躍できるのか?
このように個性が強いマスクだが、経営だけでなく、科学技術の知識も正しく兼ね備えた人物である。
彼の科学技術の知識、敬意は筋金入りだ。たとえば彼は、スペースXの従業員に対して「物理学の限界を追い求めろ」と語る。実際のところ、理論と現実の間には大きな隔たりがあるので、マスクの言っていることを言葉どおりに思い求めるのは無理な話。しかし、このマインドの高さが、スペースXのロケットの高い性能、効率を裏付けてもいる。
昨年には、所属していたトランプ大統領の戦略・政策フォーラムのメンバーを辞任している。これはトランプ大統領が、「気候変動はでっちあげだ」などと主張して、パリ協定からの離脱を表明したことに反発したものだった。それが間違ったことなら、たとえ大統領でも容赦しない。
マスクのような強烈なマインドを持つ日本人はなかなかいない。いや、いたとしても日本では正当に評価されず、海外に「流出」してしまうことが多い。
たとえば2014年、青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は、日本では活躍できないとの想いから渡米し、米国籍を持つ米国人として研究を続けていることが話題になった。その後も「日本は研究者の待遇が悪い」と批判を続けている。
近年では、一般のエンジニアが中国や韓国の企業へ引き抜かれるのも当たり前になり、優れた科学者、技術者の頭脳流出はさらに進んでいる。
科学技術立国・日本が「かつて」のものになった原因のひとつは、ここにあるのかもしれない。